一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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開閉両方の気孔を観察するには

質問者:   教員   弘一郎
登録番号1492   登録日:2007-12-13
中学校理科教員です。中学1年の授業で,毎年気孔の観察をしています。その日の条件によって気孔の開閉は決まってくるようですが,できれば気孔が開閉することを示すためにも,開いた気孔と閉じた気孔の両方を観察させたいと思っています。中学校にある設備をしようしてこのようなことは可能でしょうか?
弘一郎さま

みんなの広場へのご質問ありがとうございました。担当の柴岡ともうします。気孔の観察に使われている方法には
(1)表皮を剥いで普通の透過光型顕微鏡で観察する 
(2)マニキュアなどを使っって1次レプリカを作り普通の顕微鏡で観察する (3)歯医者さんが歯の型をとる時に使うシリコン・ラバー(デンタル・ラバー)を使ってまず1次レプリカを作り、これを元にマニキュアを使って2次レプリカを作り普通の顕微鏡で観察する 
(4) 落射光型顕微鏡を用いて葉そのものを観察する、
などの方法があります。このうちの(4)は昔は良く用いられていましたが、最近では落射光型顕微鏡を持っているところが少なくなったのと、あまりハッキリと気孔が見えないこととで、今では使われていないようです。(1)は気孔の孔辺細胞中の葉緑体が見えるなどの長所がありますが、剥ぐ時に気孔は閉じてしまいます。(2)はもっとも手軽な方法ですが、マニキュアに含まれている有機溶媒の影響で、やはり気孔は閉まってしまいます。ご希望の開いている気孔、閉まっている気孔を見るには、(3)の2次レプリカ法しかないと思います。この方法を用いるには、まず、デンタル・ラバーを入手しなければなりませんが、理科実験用品屋さんに頼めば普通には入手できると思いますが、それが駄目な時は歯医者さんにお願いするのが良いでしょう。デンタル・ラバーは固まっていないラバ-本体と、これを固まらすための薬剤がそれぞれチューブに入っています。このそれぞれを、良くかき混ぜるとラバーが固まり始めるのですが、固ま
る前に葉の観察したい面に塗りそこで固まらせます。固まってできたものが1次レプリカです。こうして作った1次レプリカの葉に接していた面に無色透明のマニキュアを塗り、乾かした後、剥がして2次レプリカを作り、これを観察するのです。葉の表面の凹凸は1次レプリカでは凸凹になりますが、2次レプリカでは再び凹凸にもどるので、気孔が孔として観察できます。
この方法の長所は
(1)葉を傷めないこと(上手にやれば、同じ気孔の開いているもの閉じているものの両方をとることができる)
(2) 自然状態での気孔を観察することができること
(3) デンタル・ラバーは濡れている歯の型をとるためのものですから、葉が濡れていても型がとれる(大きな水滴などは除去して下さい)こと
(4) 1次レプリカの良いものがとれれば、それを元に何枚でも2次レプリカが作れること(大人数の生徒さんに簡単にサンプルを提供できます)
などです。この方法で上手にサンプルを作るためのコツは、あわてないことです。ラバーは固まらせるための薬剤を多く使うと早く固まりますが、細かい凹凸が写しとれません。固まらせる薬剤の量を少なくして、ゆっくり固まらせて下さい(あわてて剥がそうしないで下さい)。2次レプリカについても、市販のマニキュアそのままでは細部が写しとれません。酢酸エチルか市販の除光剤で薄めてから使って下さい。それとマニキュアは薄く塗って下さい。どのくらい薄めたらよいかなど、いろいろと試して決めて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-01-10
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