一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物ホルモン溶液の作成法について

質問者:   一般   Malus
登録番号1498   登録日:2007-12-18
 はじめまして、小生は学生時代主に組織培養について学び自宅にて趣味で蘭の無菌播種や培養をしています。今まで自宅では植物ホルモン利用せず、以前より植物ホルモンの利用について検討していましたが手持ちの計りが0.1グラムまでしか計量できないようなものしか無く躊躇しておりました。
 しかし、最近になりシンビジウムのメリクロンをするに当りホルモン剤を利用しようと思い立ちました。既製のホルモン溶液や製薬会社に溶液の調整を依頼しようと考えたのですが既製品では種類も限られ、製薬会社にもあまり良い返事はいただけませんでした。
 そこで疑問に思ったのは、学生時代は試験という事がまず頭にあり学校の精度の良い計りで計っていたものの手持ちの最小計量単位0.1グラム程度の計りで計ったとして出る最大の誤差0.099グラム程は自分が考えている程に植物は反応するのだろうかということでした。
 培養の目標とするところは、培養物の芽を動かすことや、過剰なホルモン添加による変異を避ける程度では気を使いすぎのような気がしております。
 そこで質問させて頂きたいのですが、植物によって異なるとは思うのですが0.1グラム精度の計りでホルモン溶液(αナフタレン酢酸、6-ベンジルアデニン)を調整するのは無謀でしょうか。
 ご多忙中誠に申し訳ございませんがご回答賜れれば幸いでございます。
 
Malus様

質問にお答えいたします。
まず、天秤のことですが、どのような種類なのか分かりませんので、0.1gと言うのを精度とみなすことにします。この天秤で100mg (0.1g)を測ったとします。これを100mlの水で溶かすと濃度は1g/lとなります。ジベレリン(他のホルモンも大体おなじです)だと普通の生理的濃度域は10nM〜1μMですから、例えばGA3を例にとると、分子量は346なので、1g/lという濃度はおおよそ3mM程度という高い濃度になります。そこでこれから希釈して1μMの溶液を作成するには、300倍以上薄めなければなりません。
そのような薄い濃度では、10%の誤差があったとしても1.1μMなので、0.1μMの差が培養等の場合、大きな生理的影響をもたらすことはないでしょう。きわめて厳密な実験をする場合とちがって、組織培養のような場合はホルモンの濃度が、生理的濃度の範囲に収まれば問題ないでしょう。濃度が one order 異なると、効果の点で量的な差はでるかもしれませんが、異常と言うことはないと思いますところで、ホルモンの扱い方などは知っておられるとはおもいますが、1-ナフタレン酢酸も6ーベンジルアデニンもそのままでは水に溶けませんので、注意してください。1〜10μlがsamplingできるマイクロピペットをもっておられるなら、エタノールに溶かした原液からμlの単位で直接培養液に加えて望む濃度を得てもよいでしょう。少量のエタノールが加わっても影響はありません。
以上で参考になりましたでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-01-10