一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アスパラガスの維管束

質問者:   教員   AC
登録番号1516   登録日:2008-01-12
専門が動物生理学なので、植物のことがあまりわかりません。宜しくお願いいたします。身近な野菜を使って、生物学科以外の学生に単子葉類と双子葉類の維管束を見せる簡単な実習を考えたいと思っています。単子葉類ではアスパラガスがよいと聞き、早速徒手切片を作って予備実験をしてみました。サフラニンなどでも染めて見ましたが、教科書にあるように木部が茎の中心側、篩部が茎の外側、と分かれているというよりは、V字型に並んだ道管にはさまれた谷間に篩部があるように見えます。たしかにここには明るい大き目の細胞(篩管)と暗い小さめの細胞(伴細胞)らしきものが見えます。しかしもしこの観察が正しいとすると、篩管は直径が道管の半分くらいあることになります。教科書では一般に篩管の細胞は道管よりもかなり小さいはずですが、ここの細胞はかなり大きいのです。アスパラガスはそういうものなのでしょうか?それとも見る場所を間違えているのでしょうか?同じ道管の間でも、この場所よりも少し外側(表皮側)には細かい細胞が密集していますが、大小の細胞は見分けられないので、これらは篩部繊維かな?と思っているのですが、実はここが篩部なのでしょうか?すっきりしなくて困っております。宜しくお願いいたします。
ACさま

みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を形態学がご専門の日本女子大学の今市涼子先生にお願い致しましたところ、以下のような詳細なお答えを頂きました。また別に送ってい頂いた図についてもコメントが頂けております。きっとご参考になると思います。

今市先生からのご回答
双子葉類の茎の横断面では、木部を内側に、篩部を外側にもつ1セットの維管束が輪状に配置しており、全体として真正中心柱と呼ばれています。これに対して単子葉類の茎では、木部と篩部の1セットの維管束が全体的にばらばらに配置しているようにみえるので、不整(斉)中心柱と呼ばれています。しかし単子葉類では、ばらばらといっても個々の維管束をみると、双子葉植物の維管束と共通する特徴があることがわかります。確かに木部がV字状をなし、篩部を抱いているようにみえ、木部と篩部が形成層を介して相対する双子葉類の維管束とは異なります。しかし木部、篩部の分化の進む方向は、双子葉の場合と同じです。すなわち、木部は茎の中心側から外側に向かって組織分化を起こし、篩部はこれとは逆に茎の外側から中心側に向かって組織分化を起こします。双子葉植物の場合は、外側からと内側からの組織分化が進み、両者がぶつかる未分化の領域に形成層が分化することになります。これに対して単子葉類では、外側から分化が進む篩部と、中心側から分化が進む木部とが接することがなく、したがいまして形成層は分化しません。篩管の直径が大きいというお話ですが、これについては、私は正確な情報をもっておりませんが、植物群によって多様であってもいいのではないかと考えます。単子葉類のアスパラガスでは少なくとも篩管の直径はかなり大きいようです(K.Esau 1965 Plant Anatomy. 2nd ed. John Wiley and Sons, New York, p.370にアスパラガスの茎の断面の図がのっています)。

今市 涼子(日本女子大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-01-31
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