一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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赤外線と植物の関係

質問者:   大学生   自然大好き
登録番号1518   登録日:2008-01-13
赤外線写真を撮影することで、病害を発見する試みがあるという話
を聞き興味を持ちました。

そういった話によると、植物の活力が低下すると,葉の赤外線反射率の低下
するそうですが、これはなぜなのでしょうか。

これとは反対に枯れ葉の赤外線反射率は生の植物の葉よりも高いと聞いたことがあります。実際僕も枯れ草の赤外線写真を撮影したことがありますが、かなり反射していました。これの不整合性は何に起因するのでしょうか。一度活力が低下すると、赤外線反射率が低下するが、完全にかれてしまうと、赤外線の反射率が反ってあがるということでしょうか。だとしても、どのような仕組みでそうなったのか気になります。いったい植物の赤外線反射特性はどのようにして決まっているのでしょうか。
自然大好き さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「赤外線と植物の関係」に関するご質問は、生態圏リモートセンシングを専門に研究されている東京大学の大政謙次先生に伺い以下のような詳しい解説をいただきました。大いに参考になると思います。しっかりと理解してください。

フィルム写真の次代から、赤外カラー写真を使って病害を診断する試みは行われてきました。ご存じのように、植物葉は光合成色素の吸収のために、正常な葉では0.7μm位までは反射が極端に小さく、それ以上になると葉での吸収がほとんどなくなり、急激に反射が大きくなり、1.3μm位までは大きな反射続きます。赤外カラー写真では、緑(<0.6μm)、赤(<0.7μm)、近赤外(<0.9μm)に感光する乳剤を使って(0.5μm以下の波長は除去)、緑を青、赤を緑、近赤外を赤で表示します。このため、植物が健康だと赤色に、変色してくると黄色や緑になってきます。この変化を利用して病害(葉の色が変わる)診断が可能です。
0.8〜1.3μmぐらいまでの近赤外の反射は、葉の細胞配列や水和状態に関係しているといわれています。そのため、葉がしおれてくると反射が小さくなってきます。植物の活力というのは、生理機能変化ということではなく、あくまでも細胞間隙や細胞内の水の状態がかわり、葉内の光の乱反射がかわるということです。
完全に枯れた状態では、0.8〜1.3μmの近赤外の反射が、生の葉よりも大きいかどうかはわかりませんが、反射が大きくなります。また、水の吸収がなくなりますので、水の吸収帯(例えば0.96や1.2、これは小さい吸収帯や1.45や1.94μm、これは大きい吸収帯、通常の赤外線写真ではとれませんが)がなくなります。

大政 謙次(東京大学大学院農学生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-01-31
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