質問者:
一般
てら
登録番号1519
登録日:2008-01-14
人間一人が呼吸して排出している二酸化炭素を植物によって減らし、植物によって最適な酸素量を排出する為にはどれぐらいの植物が必要なのでしょうか?一人当たりの緑量
一人当たり1本の木で間に合うのでしょうか?それとも東京ドーム1個分の森が必要なのでしょうか?
せめて自分が排出している二酸化炭素を減らそうと思い、どれぐらいの緑があれば地球温暖化防止に役立てるのかと思いまして・・・。
また、人間一人の生活から排出されている二酸化炭素を最適な酸素量にする為にはどれぐらいの緑が必要なのでしょうか?
てら さま
ヒトは生きていくために、成人では1日に約2500キロカロリーに相当する食事を摂取する必要があります。これらの食品にはビタミンなどヒトの活動に必要な成分が適当な割合で含まれている必要がありますが、大部分の食品成分は呼吸によって吸収される酸素で酸化され、ヒトの運動、成長、神経活動などに必要な成分とATPを供給しています。その呼吸によって、1日に約500リットルの酸素を吸収しています。
500リットルの酸素によって2500キロカロリーに相当する食物が酸化され、酸素とほぼ当量(500リットル)の二酸化炭素が呼吸によって発生します。食物の成分・種類(炭水化物、脂質、タンパク質など)によって食物に含まれる炭素は少しずつ異なりますが、食物から発生する二酸化炭素の量は呼吸で消費する酸素と当量の約500リットルとみなすことができます。
化学的に当量であることはモル数が等しいことですが、これを地球環境問題で用いられている炭素の重さで表現すれば、ヒトが1日に呼吸によって放出する500リットルの二酸化炭素は、267グラムの炭素に相当します。1年間では97キログラムとなり、世界人口を60億とすれば、ヒトの呼吸によって地球大気に1年間で5億8200万トンの炭素に相当する二酸化炭素が放出されていることになります。現在、地球上では陸上、海中の光合成生物によって年間1226億トン炭素に相当する二酸化炭素が光合成によって固定されています(本コーナー登録番号1390に対する回答参照)。従って、地球全体としてみれば、地球の60億人のヒトが呼吸によって放出している二酸化炭素は、植物が光合成によって二酸化炭素を固定している量に比べほんの僅か(0.47%)です。地球にはヒト以外に、植物の光合成産物を食物とする多くの生物があり、これらの生物もヒトと同様に酸素を吸収して二酸化炭素を放出し、それらを合計すると、年間1196億トン炭素と推定されています。すなわち、年間光合成固定量(1226億トン炭素)の大部分は、光合成生物以外の生物によって酸化され二酸化炭素となり、大気二酸化炭素の濃度バランスが(19世紀まで)保たれていました。
ご質問にありますヒトが呼吸で放出する二酸化炭素を固定するためどの程度の植物が必要か、については植物の種類、季節、太陽光以外の多くの環境条件によって、光合成速度は大きく変動するため一概にはお答えできませんが、次のような値を参考にしていただければと思います。本コーナーの登録番号0845に対する回答にありますように、年間1平方メートル当たりの光合成量は、温帯常緑森林、温帯落葉森林、温帯草原、農耕地でそれぞれ0.53, 0.50, 0.23, 0.28 キログラム炭素です。上に述べたようにヒト1人が1年間に呼吸で放出する二酸化炭素の量は、炭素として97キログラムですから、例えば、農耕地であれば346平方メートル(97/0.28)が必要になります。
ヒトは二酸化炭素を呼吸によって放出する以外に、産業革命以来、特に20世紀以降、生活をする上で化石燃料を多量に消費し二酸化炭素を放出するようになって来ました。その量は、日本では、最近、炭素放出量に換算すると1人当たり年間約10トンとなり、呼吸による放出量(97キログラム)の100倍以上となっています。[ちなみに、これだけ多量の二酸化炭素を呼吸によって放出する動物はゾウ(本川達雄:ゾウの時間ネズミの時間(中公新書))]。従って、日本人1人の生存、活動の結果として発生する二酸化炭素をすべて植物光合成によって固定するためには、農耕地であれば約35000平方メートル以上が必要になります。現在、世界での1人当たりのエネルギー消費量増加に伴い、二酸化炭素放出量が植物光合成量よりも大きくなり、その結果として、大気中の二酸化炭素濃度の上昇、赤外線エネルギーの大気圏外への放出の抑制、地球温暖化を招いています。
ヒトは生きていくために、成人では1日に約2500キロカロリーに相当する食事を摂取する必要があります。これらの食品にはビタミンなどヒトの活動に必要な成分が適当な割合で含まれている必要がありますが、大部分の食品成分は呼吸によって吸収される酸素で酸化され、ヒトの運動、成長、神経活動などに必要な成分とATPを供給しています。その呼吸によって、1日に約500リットルの酸素を吸収しています。
500リットルの酸素によって2500キロカロリーに相当する食物が酸化され、酸素とほぼ当量(500リットル)の二酸化炭素が呼吸によって発生します。食物の成分・種類(炭水化物、脂質、タンパク質など)によって食物に含まれる炭素は少しずつ異なりますが、食物から発生する二酸化炭素の量は呼吸で消費する酸素と当量の約500リットルとみなすことができます。
化学的に当量であることはモル数が等しいことですが、これを地球環境問題で用いられている炭素の重さで表現すれば、ヒトが1日に呼吸によって放出する500リットルの二酸化炭素は、267グラムの炭素に相当します。1年間では97キログラムとなり、世界人口を60億とすれば、ヒトの呼吸によって地球大気に1年間で5億8200万トンの炭素に相当する二酸化炭素が放出されていることになります。現在、地球上では陸上、海中の光合成生物によって年間1226億トン炭素に相当する二酸化炭素が光合成によって固定されています(本コーナー登録番号1390に対する回答参照)。従って、地球全体としてみれば、地球の60億人のヒトが呼吸によって放出している二酸化炭素は、植物が光合成によって二酸化炭素を固定している量に比べほんの僅か(0.47%)です。地球にはヒト以外に、植物の光合成産物を食物とする多くの生物があり、これらの生物もヒトと同様に酸素を吸収して二酸化炭素を放出し、それらを合計すると、年間1196億トン炭素と推定されています。すなわち、年間光合成固定量(1226億トン炭素)の大部分は、光合成生物以外の生物によって酸化され二酸化炭素となり、大気二酸化炭素の濃度バランスが(19世紀まで)保たれていました。
ご質問にありますヒトが呼吸で放出する二酸化炭素を固定するためどの程度の植物が必要か、については植物の種類、季節、太陽光以外の多くの環境条件によって、光合成速度は大きく変動するため一概にはお答えできませんが、次のような値を参考にしていただければと思います。本コーナーの登録番号0845に対する回答にありますように、年間1平方メートル当たりの光合成量は、温帯常緑森林、温帯落葉森林、温帯草原、農耕地でそれぞれ0.53, 0.50, 0.23, 0.28 キログラム炭素です。上に述べたようにヒト1人が1年間に呼吸で放出する二酸化炭素の量は、炭素として97キログラムですから、例えば、農耕地であれば346平方メートル(97/0.28)が必要になります。
ヒトは二酸化炭素を呼吸によって放出する以外に、産業革命以来、特に20世紀以降、生活をする上で化石燃料を多量に消費し二酸化炭素を放出するようになって来ました。その量は、日本では、最近、炭素放出量に換算すると1人当たり年間約10トンとなり、呼吸による放出量(97キログラム)の100倍以上となっています。[ちなみに、これだけ多量の二酸化炭素を呼吸によって放出する動物はゾウ(本川達雄:ゾウの時間ネズミの時間(中公新書))]。従って、日本人1人の生存、活動の結果として発生する二酸化炭素をすべて植物光合成によって固定するためには、農耕地であれば約35000平方メートル以上が必要になります。現在、世界での1人当たりのエネルギー消費量増加に伴い、二酸化炭素放出量が植物光合成量よりも大きくなり、その結果として、大気中の二酸化炭素濃度の上昇、赤外線エネルギーの大気圏外への放出の抑制、地球温暖化を招いています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
浅田 浩二
回答日:2012-08-25