一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ヒガンバナの花成ホルモン

質問者:   教員   さっちん
登録番号1524   登録日:2008-01-20
花芽形成の授業でフロリゲンは葉で作られ、芽に移動すると話したところ、生徒から、ヒガンバナは葉が出る前に花芽が地中から出てくるけど、フロリゲンはどこで作るのか、と質問を受けました。カタクリや、ソメイヨシノなど葉に先行して開花する植物はどうしているのか、知りたいと思います。
さっちん さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
生徒の質問は当然の疑問ですね。なかなか鋭い指摘です。フロリゲンは主にタバコ、オナモミ、アサガオ、コウキクサなど日長反応性の植物で研究され説明されてきたためと思われます。最近では、シロイヌナズナやイネで分子レベルでの研究が進み、フロリゲンは栄養成長を続ける茎頂分裂組織を花芽形成へ向かわせるタンパク質であるこが明らかにされました。今まで研究された植物では日長に反応して葉でつくられ茎頂へ運ばれることが明らかです。しかし、花芽の形成は日長ばかりでなく温度(高温あるいは低温)の周期的変化や内在生理的信号で誘導されるものもあります。春化処理(バーナリゼーション)は低温を花成に必要な植物(たとえば冬コムギ)に有効ですし、反対にスイセン、ヒヤシンスなどの花芽形成には鱗茎の肥大時期に20度から25度以上の高温が必要です。これらの植物の花成とフロリゲンについてはっきりとした研究はありませんが、フロリゲンは「葉でつくられ茎頂(腋芽を含む)に運ばれて、栄養成長を続ける分裂組織を花芽形成に向かわせる内生信号物質」と一般的に認められていますので、環境刺激の種類に関わらず花芽形成には必要なものと考えて差し支えないと思います。ヒガンバナ、カタクリなどの鱗茎植物ではスイセン、ヒヤシンスの調査から類推すると、前年の鱗茎肥大時期(花が終わった後)に花成が起こると思われます。現段階では、フロリゲンはやはり葉でつくられ鱗茎茎頂に運ばれて花芽を形成しており、葉がなくなった頃には花芽をもった鱗茎が完成して休眠していると考えてよいと思います。サクラの花成については登録番号1170に解説がありますので参考になさってください。その他の花木についても花成の起こる時期を考慮することが必要です。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-01-31