一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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グリーンカーテン二酸化炭素の吸収量

質問者:   その他   中島っこ
登録番号1531   登録日:2008-01-28
小学校の校舎の壁面を使って、グリーンカーテンをしようと考えています。最近良く言われる地球温暖化防止にも一役買うかも知れないと思い、取り組みを考えています。ヒルガオ科のオーシャンブルーの品種を植えようとしています。この品種が一年間に吸収する二酸化炭素の量の算出方法を教えてください。
中島っこ 様

本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。地球温暖化防止に関心をお持ちとのこと、尊敬いたします。

概略を説明させていただくと、植物は次の式にしたがって二酸化炭素を吸収し、炭水化物などの有機化合物(C6H12O6で示す)を合成しています。なお、有機化合物は植物体そのものです。

6CO2 + 6H2O + 光のエネルギー → C6H12O6 + 6O2(光合成の式)

この式に従うと、100グラムの有機化合物が合成されるためには、約147グラムの二酸化炭素(約40グラムの炭素に相当)が吸収される計算になります。ところで、植物体を作り上げている有機化合物には、炭水化物以外にタンパク質や脂質などが含まれていますが、大まかな計算としては、上に示したC6H12O6で代表させて良いでしょう。このように考えると、植物による二酸化炭素(または炭素)の吸収量は、生長した植物体の重さから算出できることになります(ただし、植物は、通常、約90パーセントの水を含んでおりますので、計算においてはこの点を考慮する必要があります。要するに、植物体を乾燥させた後の重さが、ほぼ、合成された有機化合物の量に相当すると見なす訳です。大雑把には、生のものの重量の約10パーセントと見なすことが出来ます)。

ところで、一方、植物は上の式で示されたのとは全く逆の過程(呼吸)で、光合成によって合成された有機化合物を分解し、生活活動に必要なエネルギーを手に入れています。すなわち、植物は有機化合物の合成と分解を行なっており、そのバランスの結果として植物体が維持されていることになる訳です(このバランスの結果として、目に見える植物体がある訳です)。簡単に要約すると、最終的に育った植物の乾燥重量から、上の式に基づいて、差し引きとして吸収された二酸化炭素(または炭素)の量を見積ることが出来ます。

ただし、「地球温暖化防止」と言う視点で考えた時、今一つ問題があります。貴方は、成長を終えて枯れてしまった植物体をどのように処理しますか。もし、これを土壌に埋めて腐らせると、腐敗の過程で有機化合物は分解され、再び二酸化炭素になって大気中に放出されてしまいます。大気中への二酸化炭素の放出を抑えたければ、枯れた植物体をそのまま(永遠に)倉庫に保存しておくか、または、深く地中に埋めておいて人類が地球温暖化防止の問題の解決に目途をつけたころに取り出すことになるのでしょうか(その時には、化石燃料としての石油や石炭となっているかも知れませんね)。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2008-01-31
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