一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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道管はなぜ内側か

質問者:   教員   てっけい
登録番号1546   登録日:2008-02-20
こちらのweb上に同じような質問があり、そこでの回答主旨は、
「並立型が多く見られる理由は実のところよくわかっていませんが、(中略)道管や木部繊維などの木部の細胞の多くは成熟すると死細胞になりますので、もし木部が外側に配置していると肥大成長には不都合だと考えられます。」となっており、なるほどと思ったところですが、以下のような考え方は間違っておりますでしょうか?
「植物にとって水が通る道管の方が大切だと考えられ、自然淘汰の原則から考えて大切な管である道管が内側になった」

 また、小学生の通う塾では以下のように習ったそうです。
「師管は栄養分が通っており、昆虫などがそれを吸いやすいように外側になっている」このような考え方もあるのでしょうか?しかし自分としてはこの考え方では、植物側には何の利益もなく、逆に「昆虫に吸われないように師管が内側になってしまう」ことにならないか?と考えるのですがいかがでしょうか?それとも、そうすることで何らかの利益が植物側にあるのでしょうか?
雑多な質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
てっけい様

質問コーナーへようこそ。面白い考えですね。でも、自然淘汰の原則にそって、木部は外側に進化するというのはちょっと考えられませんね。もしそうだとすると、より進化した植物はそのようになっているはずです。維管束の配列は実にさまざまです。並立型は被子・裸子植物の茎や葉でもっとも一般的に見られる型です。複並立型維管束は木部をはさみ両側(外側と内側)に篩部があります。包囲維管束には単子葉植物のように、木部が篩部が包んでしまっているものもあります。根の場合は木部と篩部が交互に配列しています。その他は省略しますが、このような維管束の配列の多様性は勿論進化と無関係ではありません。ご質問の内容から判断すると、樹木を念頭においておられるようです。系統学的観点からは、木本性植物の方が草本生植物よりも原始的であると考えられていますので、質問の仮定とは相容れないことになります。木本植物の形成層で木部が内側に篩部が外側に造られていくのは、肥大成長(二次成長)によって機械的に堅固な組織が必要となるからです。webの回答の方が妥当な考えだと思います。それに、篩管より導管の方がより重要だという判断はうなずけません。小学生への説明は変ですね。ある種の花の特殊な構造が昆虫誘引との関係で進化してきたと言うことを篩部と昆虫の関係にまで敷衍してしまったのではないでしょうか。昆虫と植物との関係は多種多様です。昆虫が篩管液を吸うことが植物にとってなにかメリットがあるとすれば、特殊な植物と昆虫の場合に限られるでしょう。しかし、そのような例は、少なくとも私は知りません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-02-29
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