一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光と根

質問者:   高校生   おたね
登録番号1556   登録日:2008-04-08
植物を人工気象室において透明容器で培養する時、いたるところから光が当たります。それもかなり明るいものです。測定してみたら光量子量で100 PPFD程度でした。このような光を根に浴びてもランや野菜、サボテンなどの植物には悪影響がないのでしょうか?
比較実験をしたことがないのでよくわかりませんが、それが当たり前になっているし、健康に育っているようにみえます。上部は光があってよいけれど、地下部は良くないのではないですか。光が弱いから大丈夫なのでしょうか?
また根に当てる光の波長(光の色)の違いで生育の違いもあるのでしょうか?
光合成に適した赤や青の光を与えたらどうなってしまうのか疑問です。教えてください。
おたね さま

根は植物の成育にとって必要な無機養分である14種の元素を土から吸収するための器官であり、さらに、土に根を張り巡らせることによって植物の地上部を支える役割ももっています(登録番号1485の回答を参照)。そのため、野外で土に生えている植物は、太陽光が茎や葉によって吸収されるために、さらに、光を通さない土の中で伸びるため、根は光をほとんど受けていません。しかし、人工気象室で透明容器を用いて水耕で栽培した場合、多少とも根にも光が当たるでしょう。基本的に、根は光合成のための器官ではないので光照射する必要はありませんが、これが成長を抑制しているかどうかは、透明容器を黒く塗ったボール紙またはアルミフォイルで覆うなどの方法で容易にテストできるでしょう。植物の葉は光合成をするための器官ですから、太陽光エネルギーを有効に利用して光合成するための機能、また、光によってどうしても生じ細胞に害を与える活性酸素をうまく消すための機能をもっています。しかし、進化の過程で、植物の根は光が余り通らない土の中で伸びるようになってきたため、光によって活性酸素ができればそれをうまく消せないかもしれません。まず、根に光が当たらないようにして、植物の成長が影響を受けるかどうか、についてテストをすることが必要でしょう。

使われている照度計は光合成に有効な400 – 700 nmの波長範囲の光量子数に比例する値が単位(PPFD; umol光量子m-2 sec-1)になっていますが、これを用いて夏の正午頃の太陽光を測定すると快晴であれば約2000になります。実験に使われた人工気象室の照度はその1/20ですから、太陽光に比べれば、余り高い照度ではありません。森の中のシダなどが生えているところ程度の照度のように思えますが、せっかく照度計があるのですから、いろんな天候で、植物の生えている環境で太陽光の照度を測定して、人工気象室の光環境が野外ではどの辺に相当するのかを知っておくことも大切です。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-04-08
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