一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ヤドリギの果実の「白い筋」

質問者:   一般   なかなか
登録番号1559   登録日:2008-03-07
ヤドリギの果実を観察していて、「白い筋」があることに気がつきました。
わかったことを自分のHPにまとめてみましたが、(下記)
http://www.juno.dti.ne.jp/~skknari/yadorigi.htm

この「白い筋」の名前がどうしてもわかりません。 図書館で本を何冊か読みましたが、書いてある本がありませんでした。

ヤドリギの果実にある、この「白い筋」には、何か植物用語または名称はつけられていないのでしょうか?

どうぞよろしくお願いします。
なかなか様

いろいろと行き違いもあり、大変遅くなってしまいましたが、塚谷先生から以下のようなご回答を頂きましたので、お送りします。ご回答の中にもありますように、日本語の名前はないようです。

ご質問ありがとうございます。ヤドリギの果実中に発達する、伸縮性の強い筋の部分ですね。あの部分は、特殊なセルロース分子を蓄積しているために、鳥に食べられた後、消化後の糞に高い粘着性を与える性質があります。私も子供の頃、タネをエノキの肌になすりつけて発芽を観察したことがありますが、ぬるぬるしてそのままではあまり粘着する感じではありませんね。鳥の消化管を通過した後、適度にほぐれて粘りけの高いものとなるようです。問題の部分は、それによって種子散布に役立つとされているところで、Viscin組織と呼ばれています(和名はないようです)。ヤドリギは樹にまず種子が接着し、その後、寄生根を寄主の樹皮下に潜り込ませる生活をしていますから、そのために種子に粘着性を与える必要があったのでしょう。このViscin組織は、ヤドリギでは、珠柄に接続する組織になっています。
こういう特殊なセルロース分子を含むような粘着性の組織を持つ果実としては、他にもアリ植物のアリノトリデの果実などがあります。これの場合も、果実を割ってみると、珠柄の部分に白い伸縮性の高い組織があって、これがおそらく着生に役立つのだろうと思われます。ほかにも類似の組織を持つ植物はきっと多いのでしょう。観察を今後も続けてみていってください。

塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-06-17
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