質問者:
自営業
なみ
登録番号1567
登録日:2008-03-21
ハーブ栽培をしながら、もっと植物のことが知りたいと植物学の本を読み始めました。花の色素は活性酸素の害を消去する働きがあり紫外線にあたればあたるほど鮮やかな色になるとありました。青・赤紫、黄色などが紹介されていましたが、白い花の場合、活性酸素を消去するためにどのようなことがなされているのでしょうか?青・赤紫などの花とは違う方法で、また違った成分が働いているのでしょうか?みんなのひろば
花の色素の抗酸化作用
もうひとつあるのですが、カモマイルは「植物の医者」と言われ、近くに植えてある植物を元気にさせるとよく本にのっています。どのような成分がどこから分泌されて他の植物にどう作用するのでしょうか?詳しくのっているものがなかなか見つかりません。(こういったことが詳しくのっている本などがあれば紹介していただきたいのですが…)どうぞよろしくお願いいたします。
なみ さま
花の色素が活性酸素による細胞の傷害を防いでいるかどうかについてのご質問ですが、種類の多い花の色素が活性酸素による障害を防ぐ機構は、大きく分けて1)花弁の表皮細胞に色素をため、これによって内側の細胞に太陽光が当たらないようにして、内側の細胞で光によって活性酸素が生ずるのを抑える、すなわち、表皮細胞の色素が光のスクリーンとなっている場合と、2)色素分子が活性酸素などを消去している場合、が考えられます。
1)春になると、生垣によく植えられているウバメガシの新芽の葉が赤いのが目につきますが、これは赤色のアントシアニンが若い葉の表皮細胞に蓄積し、これによって葉の内側の葉緑体を含む葉肉細胞に余り太陽光が当たらないようにしています。このため、葉肉細胞で活性酸素が光によって生成するのを防いでいますが、花弁の色素も同じスクリーン効果によって防御しています。花の色素には紫外線をよく吸収するフラボノイドが多いため紫外線スクリーンとなっている場合が多いと思います。(余り照度の高くない)紫外線を照射すると、花の色が濃くなるのは、植物の紫外線ストレスに対する適応と考えられます。
2)の例として植物色素のうち、カロテノイド、フラボノイド(アントシアニンも植物でこれまで見つけられている約四千種のフラボノイドの一つ)などが、抗酸化作用(活性酸素そのものの消去、活性酸素によって酸化された細胞成分(とくに脂質ラジカルなど)がさらに酸化されないようにする作用)によって活性酸素による傷害を防いでいます。
色素をもっていない白い花はどうしているかのご質問ですが、一年中太陽光を浴び続けている植物は、生物のうちで最も活性酸素ができやすい生物です。従って、植物はどの組織でも活性酸素を消去する酵素をもち、これによって活性酸素による障害を防いでいます。上の1)、2)の色素によって活性酸素による傷害をある程度防御できる植物でも、活性酸素を消去する酵素は必ず含まれています。主な活性酸素を消去する酵素はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD), カタラーゼ、ペルオキシダーゼなどで、植物を初め酸素が必要な全ての生物(好気性生物)は、活性酸素を消去するこれらの酵素なしには生存できません。
カモマイルはカミツレ(カモミール)ともよばれ、共にキク科のAnthemis nobilis(ローマンカモマイル)とMatricaria chamomilla(ジャーマンカモマイル)があり、ヨーロッパでは中世から生薬、化粧品として使われ、現在も利用されています。主に花が利用され、有効成分として化学構造の面からみてナフタリン(樟脳)の異性体であり、匂いも似ているアズレンが含まれています。アズレンは(白色の)ナフタリンと異なり深青色を示しますが、アズレンの名も、この色に由来してつけられています。アズレンの薬理作用などについてはインターネットに多くの情報がありますのでそれらをご覧下さい。カモマイルが近くに生えている他の植物の生育を助けているとすれば、恐らくアズレンの作用による可能性が高いように思はれますが、カモマイルの他の成分の作用によるのかも知れません。本質問コーナーでは、これまで、ある植物が周りの他の植物の生育に、(プラスまたはマイナスに)影響する他感作用(アレロパシー)について、しばしば議論されていますので(質問登録番号0076, 登録番号0458, 登録番号0735, 登録番号1171, 登録番号1267, 登録番号1478, 登録番号1553への回答)、これらをご覧いただければ、カモマイルのアレロパシーを考える上でご参考になると思います。
花の色素が活性酸素による細胞の傷害を防いでいるかどうかについてのご質問ですが、種類の多い花の色素が活性酸素による障害を防ぐ機構は、大きく分けて1)花弁の表皮細胞に色素をため、これによって内側の細胞に太陽光が当たらないようにして、内側の細胞で光によって活性酸素が生ずるのを抑える、すなわち、表皮細胞の色素が光のスクリーンとなっている場合と、2)色素分子が活性酸素などを消去している場合、が考えられます。
1)春になると、生垣によく植えられているウバメガシの新芽の葉が赤いのが目につきますが、これは赤色のアントシアニンが若い葉の表皮細胞に蓄積し、これによって葉の内側の葉緑体を含む葉肉細胞に余り太陽光が当たらないようにしています。このため、葉肉細胞で活性酸素が光によって生成するのを防いでいますが、花弁の色素も同じスクリーン効果によって防御しています。花の色素には紫外線をよく吸収するフラボノイドが多いため紫外線スクリーンとなっている場合が多いと思います。(余り照度の高くない)紫外線を照射すると、花の色が濃くなるのは、植物の紫外線ストレスに対する適応と考えられます。
2)の例として植物色素のうち、カロテノイド、フラボノイド(アントシアニンも植物でこれまで見つけられている約四千種のフラボノイドの一つ)などが、抗酸化作用(活性酸素そのものの消去、活性酸素によって酸化された細胞成分(とくに脂質ラジカルなど)がさらに酸化されないようにする作用)によって活性酸素による傷害を防いでいます。
色素をもっていない白い花はどうしているかのご質問ですが、一年中太陽光を浴び続けている植物は、生物のうちで最も活性酸素ができやすい生物です。従って、植物はどの組織でも活性酸素を消去する酵素をもち、これによって活性酸素による障害を防いでいます。上の1)、2)の色素によって活性酸素による傷害をある程度防御できる植物でも、活性酸素を消去する酵素は必ず含まれています。主な活性酸素を消去する酵素はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD), カタラーゼ、ペルオキシダーゼなどで、植物を初め酸素が必要な全ての生物(好気性生物)は、活性酸素を消去するこれらの酵素なしには生存できません。
カモマイルはカミツレ(カモミール)ともよばれ、共にキク科のAnthemis nobilis(ローマンカモマイル)とMatricaria chamomilla(ジャーマンカモマイル)があり、ヨーロッパでは中世から生薬、化粧品として使われ、現在も利用されています。主に花が利用され、有効成分として化学構造の面からみてナフタリン(樟脳)の異性体であり、匂いも似ているアズレンが含まれています。アズレンは(白色の)ナフタリンと異なり深青色を示しますが、アズレンの名も、この色に由来してつけられています。アズレンの薬理作用などについてはインターネットに多くの情報がありますのでそれらをご覧下さい。カモマイルが近くに生えている他の植物の生育を助けているとすれば、恐らくアズレンの作用による可能性が高いように思はれますが、カモマイルの他の成分の作用によるのかも知れません。本質問コーナーでは、これまで、ある植物が周りの他の植物の生育に、(プラスまたはマイナスに)影響する他感作用(アレロパシー)について、しばしば議論されていますので(質問登録番号0076, 登録番号0458, 登録番号0735, 登録番号1171, 登録番号1267, 登録番号1478, 登録番号1553への回答)、これらをご覧いただければ、カモマイルのアレロパシーを考える上でご参考になると思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-04-21
浅田 浩二
回答日:2008-04-21