質問者:
会社員
たっけ
登録番号1568
登録日:2008-03-21
はじめて質問します。自宅で観葉植物を育てるうえで疑問に思っていることです。例えば、背丈ほどの観葉植物を室内で水、光、温度ともに最適な状態で育てた場合、大人一人が呼吸により排出する二酸化炭素を全て固定することが出来るのでしょうか。逆に、プリーストリの実験ではないですが、ネズミならネズミ程度の大きさの、イヌならイヌ程度の大きさの植物で、その生き物が消費する酸素をまかなう事が出来るのでしょうか。植物によって結果は異なるような漠然とした質問ですが、化石燃料を手放せない生活の中で、せめて自分や家族の吐いた二酸化炭素くらいは、目に見える形で責任を取れたらなと思います。よろしくお願いします。
みんなのひろば
室内用観葉植物の二酸化炭素吸収量について
たっけ さん
本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。地球温暖化防止への取り組みですね。
先ず、ヒトの大人一人が呼吸により放出する二酸化炭素の量を見積もることにします。栄養学で、“大人一人が一日当たり食物として摂取しなければならないエネルギーの量”が見積もられており、その値は2000-2500キロカロリー(kcal)となっております。この数値を使うと、食物となる有機物をブドウ糖とみなしたときには、高等学校の「生物」でお馴染みの次の式により、大人一人が呼吸により一日に放出する二酸化炭素の量は約22モル(概算して、重量にして約1キログラム、気体にして一気圧の下で約500リットル)であると計算されます。
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O + 686 kcal (呼吸を表す式)
次に、室内の観葉植物が一日当たり光合成により吸収する二酸化炭素の量について考えます。一般に、光合成による二酸化炭素吸収の速度は、植物の種類や生育(環境)条件によって大きく異なります。ご質問では、水、光、温度ともに最適な状態で育てると書かれていますが、実際問題として、光合成の速度は光強度に大きく依存し、光が弱くなると植物は呼吸により二酸化炭素を放出するようになりますので、光合成による二酸化炭素吸収能を一日中有効に活用することは不可能です(もし照明を用意して夜間にも強い光を与えるとすれば、それはまた大きなエネルギー消費になります)。さて、植物による二酸化炭素吸収量の具体的な数値としては、例えばダイズのように成長のはやい草本では、光や温度などが最適な条件下で、葉の面積一平方メートル当たり、一日当たりで計算して2-5モル程度の値が得られるようです(一平方メートル当たりの値を示しましたが、イメージとしては、巾5cm長さ10cm程度の葉が200枚ほどある植物体を考えて見て下さい―“ヒトの背丈ほどの大きさの植物として”)。
ところで、室内で育つ観葉植物の成長速度(光合成による有機物の合成と呼吸によるその分解との差としての光合成産物の蓄積)は、ダイズの場合に較べてはるかに低く、これらの植物が光合成により吸収する二酸化炭素の量は、上に述べたヒトの呼吸によって放出される二酸化炭素の量に較べると、桁違いに少ないものです。そんなわけで、「ネズミならネズミ程度、イヌならイヌ程度、ヒトならヒト程度の大きさの植物があることで、それぞれの生き物が呼吸によって消費する酸素(発生する二酸化炭素)を植物の光合成の能力で補うことができる」との考えは、実情には全然合っていないものです。この問題は、大きくは、ヒトが地球上で生活してゆくためにはどれだけの耕地(農産物)や森林が必要であるかといった問題にも関連しておりますので、数値的に追求して見られるのは如何でしょうか。
なお、本コーナーで類似した質問が扱われております(登録番号1519)。そちらの方にも詳しい説明がありますので是非ご覧下さい。
本コーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。地球温暖化防止への取り組みですね。
先ず、ヒトの大人一人が呼吸により放出する二酸化炭素の量を見積もることにします。栄養学で、“大人一人が一日当たり食物として摂取しなければならないエネルギーの量”が見積もられており、その値は2000-2500キロカロリー(kcal)となっております。この数値を使うと、食物となる有機物をブドウ糖とみなしたときには、高等学校の「生物」でお馴染みの次の式により、大人一人が呼吸により一日に放出する二酸化炭素の量は約22モル(概算して、重量にして約1キログラム、気体にして一気圧の下で約500リットル)であると計算されます。
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O + 686 kcal (呼吸を表す式)
次に、室内の観葉植物が一日当たり光合成により吸収する二酸化炭素の量について考えます。一般に、光合成による二酸化炭素吸収の速度は、植物の種類や生育(環境)条件によって大きく異なります。ご質問では、水、光、温度ともに最適な状態で育てると書かれていますが、実際問題として、光合成の速度は光強度に大きく依存し、光が弱くなると植物は呼吸により二酸化炭素を放出するようになりますので、光合成による二酸化炭素吸収能を一日中有効に活用することは不可能です(もし照明を用意して夜間にも強い光を与えるとすれば、それはまた大きなエネルギー消費になります)。さて、植物による二酸化炭素吸収量の具体的な数値としては、例えばダイズのように成長のはやい草本では、光や温度などが最適な条件下で、葉の面積一平方メートル当たり、一日当たりで計算して2-5モル程度の値が得られるようです(一平方メートル当たりの値を示しましたが、イメージとしては、巾5cm長さ10cm程度の葉が200枚ほどある植物体を考えて見て下さい―“ヒトの背丈ほどの大きさの植物として”)。
ところで、室内で育つ観葉植物の成長速度(光合成による有機物の合成と呼吸によるその分解との差としての光合成産物の蓄積)は、ダイズの場合に較べてはるかに低く、これらの植物が光合成により吸収する二酸化炭素の量は、上に述べたヒトの呼吸によって放出される二酸化炭素の量に較べると、桁違いに少ないものです。そんなわけで、「ネズミならネズミ程度、イヌならイヌ程度、ヒトならヒト程度の大きさの植物があることで、それぞれの生き物が呼吸によって消費する酸素(発生する二酸化炭素)を植物の光合成の能力で補うことができる」との考えは、実情には全然合っていないものです。この問題は、大きくは、ヒトが地球上で生活してゆくためにはどれだけの耕地(農産物)や森林が必要であるかといった問題にも関連しておりますので、数値的に追求して見られるのは如何でしょうか。
なお、本コーナーで類似した質問が扱われております(登録番号1519)。そちらの方にも詳しい説明がありますので是非ご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2008-04-04
佐藤 公行
回答日:2008-04-04