質問者:
中学生
香南子
登録番号1580
登録日:2008-04-09
中学校の理科の授業で葉の気孔の勉強をしているときに疑問に思ったのですが、葉の気孔の数はだいたい同じなのでしょうか?
葉の気孔
香南子 さま
葉の組織では気孔を通して光合成に必要なCO2(二酸化炭素)を葉の細胞の中にある葉緑体にとりこんでいます。同時に気孔を通して光合成で発生した酸素を放出するとともに、根から吸収された水が空気中に放出されます(蒸散作用)。CO2のとりこみは植物の光合成を進めるために必要ですが、一方、蒸散作用による水の放出は、これによって根から無機養分の吸収を進め、また、水分の蒸発によって(ヒトの発汗による体温調節と同じように)葉の温度が太陽光によって高くなり過ぎないように調節しています。光合成は、太陽光が当たっている昼間に進行し、葉の温度調節も昼間に必要なため、(サボテンなど多肉植物以外の)ほとんどの植物で、気孔は昼間に開き、夜間には閉じています。
大気のCO2濃度は現在380ppm(0.038%)になっていますが、このレベルで毎日変動することはありません。しかし、植物が生えているところの水分は大きく毎日、時々刻々、変動しています。快晴、乾季、旱魃、砂漠などの言葉から予想されるように、気象条件によって植物が生えているところに、常に水が充分あるわけではありません。土に水がないとき、気孔から蒸散で水を失ってしまうと葉の細胞の水分が低くなり、葉がしおれてしまい、代謝できなくなります。そのような時、水を蒸散で余り失わないように、気孔を閉じます。しかし、気孔が閉じるとCO2を葉緑体に送り込めなくなり、光合成ができなくなります。そこで植物は根の周りの水の状態に対応して、水をできるだけ失わないように、しかし、CO2をできるだけ葉緑体にとりこめるよう、気孔の開閉を細かく調節しています。
ご質問の気孔の葉の面積当たりの数も、気孔の開閉と同じような調節があると考えてよいでしょう。気孔を余りたくさんもっていると、気孔の開閉だけで水の蒸散による放出を調節できなくなるため、適当な数に抑えているように思われます。一方、気孔の数が余り少なすぎると、気孔の開閉だけでCO2を充分に葉緑体に送り込めなくなり、光合成が充分に進行できなくなります。植物はこれらのバランスをよく考えて、葉の面積当たりの気孔の数を決めているように思われます。一般的に乾燥地に生育している植物は、面積当たりの気孔の数は少ないようです。しかし、葉が気孔の数をどのように“考えて”決めているかは、まだ、解明されていないといってよいでしょう。
葉の面積当たりの気孔の数と生育環境との関係について次のような例をご紹介しておきましょう。温泉などのある火山の近くでは、硫化水素ガス、亜硫酸ガスなど刺激臭のあるガスがよく発生しています。これらは植物にとっても害を与えるガスですが、このようなところに生えている植物(オオバスノキ、コヨウラクツツジ)の気孔の数は1mm2当たり64–83個ですが、このようなガスのないところに生えているミズナラ、コナラ(1mm2当たり432–498個)に比べ少なくなっています(内藤俊彦)。これは、害のあるガスが発生しているところに生えている植物は、気孔の数を少なくしてこれらのガスをできるだけ吸収しないようにしているため、と考えられています。
今から200年以上前の植物の押し葉標本と、同じ種類の、今、生えている植物の、単位面積当たりの気孔の数を比較すると、今の植物の方が気孔の数が少なくなっていることが示されています(Woodward)。200年以上前は、産業革命がまだ始まっていない頃であり、その当時の大気CO2濃度は250–270ppmであり、現在よりも100ppm以上低い濃度です。産業革命以後、石炭、石油が大量に使用されて大気CO2濃度が現在のように高くなり、植物は気孔の数を減らしても光合成に必要なCO2をとりこめるため、現在の植物の気孔の数が少なくなってきたと考えられています。
葉の組織では気孔を通して光合成に必要なCO2(二酸化炭素)を葉の細胞の中にある葉緑体にとりこんでいます。同時に気孔を通して光合成で発生した酸素を放出するとともに、根から吸収された水が空気中に放出されます(蒸散作用)。CO2のとりこみは植物の光合成を進めるために必要ですが、一方、蒸散作用による水の放出は、これによって根から無機養分の吸収を進め、また、水分の蒸発によって(ヒトの発汗による体温調節と同じように)葉の温度が太陽光によって高くなり過ぎないように調節しています。光合成は、太陽光が当たっている昼間に進行し、葉の温度調節も昼間に必要なため、(サボテンなど多肉植物以外の)ほとんどの植物で、気孔は昼間に開き、夜間には閉じています。
大気のCO2濃度は現在380ppm(0.038%)になっていますが、このレベルで毎日変動することはありません。しかし、植物が生えているところの水分は大きく毎日、時々刻々、変動しています。快晴、乾季、旱魃、砂漠などの言葉から予想されるように、気象条件によって植物が生えているところに、常に水が充分あるわけではありません。土に水がないとき、気孔から蒸散で水を失ってしまうと葉の細胞の水分が低くなり、葉がしおれてしまい、代謝できなくなります。そのような時、水を蒸散で余り失わないように、気孔を閉じます。しかし、気孔が閉じるとCO2を葉緑体に送り込めなくなり、光合成ができなくなります。そこで植物は根の周りの水の状態に対応して、水をできるだけ失わないように、しかし、CO2をできるだけ葉緑体にとりこめるよう、気孔の開閉を細かく調節しています。
ご質問の気孔の葉の面積当たりの数も、気孔の開閉と同じような調節があると考えてよいでしょう。気孔を余りたくさんもっていると、気孔の開閉だけで水の蒸散による放出を調節できなくなるため、適当な数に抑えているように思われます。一方、気孔の数が余り少なすぎると、気孔の開閉だけでCO2を充分に葉緑体に送り込めなくなり、光合成が充分に進行できなくなります。植物はこれらのバランスをよく考えて、葉の面積当たりの気孔の数を決めているように思われます。一般的に乾燥地に生育している植物は、面積当たりの気孔の数は少ないようです。しかし、葉が気孔の数をどのように“考えて”決めているかは、まだ、解明されていないといってよいでしょう。
葉の面積当たりの気孔の数と生育環境との関係について次のような例をご紹介しておきましょう。温泉などのある火山の近くでは、硫化水素ガス、亜硫酸ガスなど刺激臭のあるガスがよく発生しています。これらは植物にとっても害を与えるガスですが、このようなところに生えている植物(オオバスノキ、コヨウラクツツジ)の気孔の数は1mm2当たり64–83個ですが、このようなガスのないところに生えているミズナラ、コナラ(1mm2当たり432–498個)に比べ少なくなっています(内藤俊彦)。これは、害のあるガスが発生しているところに生えている植物は、気孔の数を少なくしてこれらのガスをできるだけ吸収しないようにしているため、と考えられています。
今から200年以上前の植物の押し葉標本と、同じ種類の、今、生えている植物の、単位面積当たりの気孔の数を比較すると、今の植物の方が気孔の数が少なくなっていることが示されています(Woodward)。200年以上前は、産業革命がまだ始まっていない頃であり、その当時の大気CO2濃度は250–270ppmであり、現在よりも100ppm以上低い濃度です。産業革命以後、石炭、石油が大量に使用されて大気CO2濃度が現在のように高くなり、植物は気孔の数を減らしても光合成に必要なCO2をとりこめるため、現在の植物の気孔の数が少なくなってきたと考えられています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-04-21
浅田 浩二
回答日:2008-04-21