一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タンニン♪

質問者:   中学生   みな
登録番号1581   登録日:2008-04-10
モモタマナの葉にはタンニンが含まれているそうで、水を軟水にする作用があるそうです。乾燥した落ち葉(赤茶色)を水につけると茶色くなりますが、これはタンニンが多く含まれているからなのでしょうか?また、みずみずしい若葉(緑色)ではタンニンの量は少ないのでしょうか?教えてください♪
みな さま

モモタマナは日本では小笠原諸島、琉球諸島の海岸で、その他に熱帯アジア、ポリネシアなどに分布し、直径1メートルにもなる落葉性の高木です。葉のタンニン(ポリフェノール)含量が高いのが特徴です。
タンニンは昔から身近なところで利用されていますが、それはタンニンの化学的性質をうまく利用したものです。一つは皮革のなめし剤、もう一つはインクです。タンニンはタンパク質と結合しやすく、牛皮などをタンニンでなめすと、皮の主成分のタンパク質であるコラーゲンとタンニンが結合し、なめされた皮革となります。こうしてなめされた皮のコラーゲンは適度の柔らかさと共に、皮革が微生物で分解されないようになるため、古くから利用されています。
タンニンに鉄イオンを加えると、鉄・タンニン錯体ができるため直ちに濃い青-紫色に変化し、これもインクとして古くから使われてきました。[米国にいたころ、硬水であった向うの水道水を使って紅茶を煎じたところ、青色になったことがあります。これは水道水に含まれていた鉄・イオンと紅茶に含まれている少量のタンニンが結合してできた“インク”だったのです。] タンニンは鉄・イオンを含め陽イオンと結合しやすい性質をもっているため、硬水の主成分であるカルシウム・イオン、マグネシウム・イオンがタンニンと結合し、これをろ過すれば硬水を軟水にすることができるでしょう。

一般にタンニンは若葉よりも成長した葉で含量が高くなり、これによって、葉が昆虫、鳥、動物などに食べられないようにする役割をもっています。これらの葉を食べると、昆虫などの消化酵素(タンパク質)とタンニンが結合して消化できなくなるため、タンニンの多い葉は食べられない、食べられにくくなると考えられています。
タンニンは葉の細胞の中では、光合成や呼吸など代謝が行われている原形質、葉緑体、ミトコンドリアにはなく、細胞の中の代謝が行われていない液胞に溜められています。このように、葉の代謝を行っている酵素(タンパク質)とタンニンが直接接触できないようにしているため、タンニンを葉に含んでいても、葉の代謝には影響しないようになっています。

モモタマナの落葉にどれだけタンニンが残っているかはわかりませんが、本質問コーナーで、これまでいろんな植物でのタンニンについて、定量法を含め議論されていますので(登録番号0210, 登録番号0820, 登録番号1109, 登録番号1152, 登録番号1184, 登録番号1476への回答)、これらを参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-04-21
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