一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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野外でのアルミニウム針金の利用

質問者:   その他   なかむら
登録番号1589   登録日:2008-04-22
野外で植物などの調査をする際に、樹木の識別ができるように番号の書いてあるプラスチックのタグをそれぞれの植物につけています。その際、ビニルテープやスプリングようなものを利用するのではなく、盆栽などで利用するアルミニウムの針金を使って木の幹や枝の部分にくくりつけています。これまでのここでの質問および答えにあるように、アルミニウムは土壌中に普通に存在し、酸性土壌になると、植物に悪影響を与えるということですが、たとえば、こうしたアルミの針金を幹にくくりつけることで、そこから溶出したアルミが樹皮から細胞中に取り入れられ、植物に悪影響を与えるということはあるのでしょうか? 土壌中では通常アルカリ土壌ですが、雨は酸性雨が多いですので、土壌に達するまでの部分も心配しています。環境を守るための調査なのに、もしかしてその植物にダメージを与えていると非常にまずいため、心配になり質問いたしました。ただ、盆栽用にアルミニウムの針金が使われているとのことで問題はないかとも思うのですが。
なかむら さま

金属アルミニウムの針金で林木にタグをつけたとき、これが植物にアルミニウム毒性を引き起こさないかのご質問ですが、岡山大学資源生物科学研究所で、酸性土壌のアルミニウムによる植物の生育阻害とその防御機構について研究されておられる、馬 建鋒 教授にお尋ねしましたところ、次のような回答を頂きました。
     
アルミニウムには様々な形態があり、植物に毒性を示すのは主にイオン形態のアルミニウム(Al3+)です。土壌のアルミニウム・イオンは、長年の間に土壌が風化して酸性土壌になる過程で、土壌中のごく一部のアルミニウムが溶け出して生じます。針金のアルミニウムは金属形態であり、金属アルミニウムは空気中では表面に薄い酸化されたアルミニウム膜ができ光沢がなくなりますが、この膜によって、それ以上に酸化されたり、溶け出したりすることはありません。したがって植物に害を与えるイオン形態になることはなく、植物にとって一般的には無害です。
また例え、アルミニウム針金の破片が土壌に落ちたとしても、また、酸性雨によってほんの僅か溶けたアルミニウム・イオンが土壌に入ったとしても、土壌の粒子は電荷をもっているため水素イオンを吸収して、土壌のpHが急激に変わることはありません。したがって、よほど酸性の強い土壌以外では、アルミニウム針金に由来するアルミニウムが植物の生育を阻害することは考えられません。

馬 建鋒(岡山大学資源生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-05-14
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