一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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柿の木

質問者:   自営業   加藤
登録番号1595   登録日:2008-04-30
はじめまして、よろしくお願いします。
柿の木に希に現れる黒い模様のことを黒柿と呼びますが、その黒い部分の成分とどういう経路を辿ると黒い模様が出るのか解りません

今まで調べたことをまとめると土壌に鉄分が多く含まれる場所にある柿の木の導管に鉄分が詰まり内部のタンニンと反応し黒くなり、積み重なった物だと思うのですがあくまで仮説なので実証出来ない状態です。
ご協力お願いします。
加藤 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
回答が遅れ申し訳ありません。黒柿についてのご質問は樹木のタンニンを研究されている森林総合研究所の大原誠資先生にお答えをいただきました。材の色素の主要な部分は重合した物質ですので、その化学構造や生成過程はたいへん複雑です。その上、個別の材について調べた研究は少なく色素の原料物質の化学的反応性からの推定に頼らざるを得ない点があります。

樹木の変色現象の原因として一般的に考えられるのは下記の二つです。
1.樹木中のポリフェノール成分が酸素、光などの作用で酸化重合して黒色化する。この変色は、pHが弱アルカリ性になると顕著になります。というのは、ポリフェノール成分はアルカリ中では容易に酸化されやすいことに拠ります。
2.昆虫等に運ばれて樹体中に入り込んだ微生物がラッカーゼのような酵素を分泌してポリフェノール成分を重合させて変色する。ただしこの場合は、必ずしも黒色化するとは限りません。
柿の木に含まれるポリフェノール成分の代表はタンニンです。従って、タンニンの酸化が黒色化の原因であることは充分に考えられます。一般に、タンニンは重金属類とキレートを形成して着色します。さらに時間が経過すると、重金属存在化でタンニンは容易に酸化されて黒色化します。加藤さんが推定しているように、土壌中の鉄分が導管から樹体内に取り込まれ、それが樹木中のタンニンとキレートを形成し、さらに鉄存在化で酸化されて重合する可能性は充分に考えられると思います。京都府立大学の湊先生の論文で、「柿材の黒い部分の色素を抽出しようとしたができなかった」とありますが、この部分はタンニンが重合して高分子化しているので、抽出されないのは当然です。
また、柿の木を枯らす病原微生物の話はあまり聞いたことがないので、上記2が原因の可能性は低いと思われます。

大原 誠資(森林総合研究所バイオマス化学研究領域)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-05-14
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