一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タラヨウやクロガネモチは雄株がなくても、雌株は結実できますか?

質問者:   一般   JIN
登録番号1608   登録日:2008-05-11
趣味で樹木の写真を撮っています。
近くの公園にタラヨウやクロガネモチがあり、秋には赤い実をつけます。
しかし、どちらもモチノキ科で雌雄異株なのに、近くに雄株が見当たりません。どうして結実できるのでしょうか。
いろいろ調べたのですが、上記2種の雌株の花が両性花と書かれた資料もありません。よろしくお願いします。
JIN さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

タラヨウやクロガネモチに限らず有性生殖を行う生物は通常、異性の配偶子(卵子と精子あるいは花粉)が融合しなければ子孫を残せません。雌雄異株植物では雌株の花に雄株の花粉がついて初めて子孫つまり果実ができます。お訊ねのように雌株だけ(あるいは雄株だけ)が植裁されている場合はどうなるのか、森林植物科学をご専門とされている東京大学大学院の宝月岱造先生に伺い、次のようなお答えをいただきました。疑問は解消すると思います。

裁判などで使われる親子判定と同じ方法を使えば、種子のDNAと母樹のDNAと周囲の同じ樹種の木のDNAを調べることによって、種子の父親(花粉親)を判定することができます。種子の花粉親が解ると、花粉親と母樹との距離、すなわち花粉がどのくらい遠くの木から運ばれてきているかが解ります。このような方法を使って、実際に花粉がどのくらいの距離を運ばれているかが、いくつかの樹種で調べられています。樫の木の一種では、数百メートルも離れた樹木からも花粉が運ばれることが知られています。ホウノキやフタバガキ科の樹木などでも同様に、ずっと遠くの木から花粉が運ばれていることが知られています。おそらく、他の多くの樹種でも同じように、花粉は結構遠くまで運ばれているのでしょう。モチノキ属ではこのような調査はまだされていませんが、タラヨウやクロガネモチでも、見回しても見つからないような、ずいぶんと離れている雄株から花粉が運ばれていると考えて良いと思います。

なお、同様な質問が1530 にあり異なる解釈が述べられていますので、こちらの回答もご参照下さい。

宝月 岱造(東京大学大学院農学生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-11-13
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