一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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続:サザンカのもち病について

質問者:   その他   ちった
登録番号1610   登録日:2008-05-12
こちらでもち病について質問させていただいたところ、新たな疑問が出てきました。
私が観察した限りでは葉の一部がもち病になっているサザンカは木全体に病気が広がっていくように思われます。以前の質問の解答によりもち病の菌は葉から侵入すると教えていただきました。木全体に病気が広がるのは個々の葉に別々に菌が感染するのか、それとも植物内の師管や導管を利用して新たな葉にたどり着くのでしょうか?
ちった さん:

登録番号1605の追加質問ですね。生物というのは自分の種を繁栄させるために効率よく増殖するいろいろな仕組みをもっています。植物の病原微生物も、感染部位から拡大増殖する方法と、遠距離感染を可能にする方法の両方をとっています。話題になっているもち病糸状菌では、感染部位から細胞間隙に菌糸を伸ばして感染領域を拡大する一方で、担子胞子を散布して遠距離にある宿主部位に感染します。胞子が散布するとき、遠くなるほど胞子密度が小さくなりますから、ある感染部位に近い部分の感染率が高くなります。そのため、ある植物個体の一部が感染すれば、その個体内の感染頻度が高まります。胞子の数は、感染部位の数、大きさなどによって急速に多くなりますので、一部の感染を放置すれば、順次個体内へ、やがては周辺の個体にも病気が広がります。寄生、共生する植物病原微生物では細胞間隙ばかりでなく、感染細胞から隣の細胞へ伝搬します。植物の痛導器官を介して広がるのはウイルスが知られています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-05-14