一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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平行脈と網状脈に別れたことについて

質問者:   中学生   タッキー
登録番号1613   登録日:2008-05-14
 どうして植物は、平行脈と網状脈に別れたんですか。又、このふたつにはなにか違いがあるのですか。
まゆピー様、タッキー様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を東京大学の寺島一郎先生にお願いいたしましたところ、以下のような詳しい回答を下さいました。寺島先生はまゆぴーさんや、タッキーさんが小学生や中学生だということに気がついて、できるだけ易しい言葉を使うように努力して下さいました。それでも難しいところがあるかも知れませんが、しっかりと勉強して下さい。

寺島先生からのお答え

葉脈の走り方(脈理、脈系)には、平行脈と網状脈、それに二叉脈系があります。平行脈は単子葉植物、網状脈は双子葉植物に見られ、二叉脈はイチョウなどで見られます。と、これまでの教科書には書いてありました。

しかし、遺伝子のデータの解析や、アムボレラという原始的な植物の発見によって、被子植物のまとめ方についての理解が進み、教科書は大幅に書き換えられつつあります。たとえば、被子植物は単子葉植物と双子葉植物は大きく二つに分かれるのではなく、ひとまとまりのグループです。そして、単子葉植物は、原始的な被子植物である、アムボレラ、コショウ、シキミ、クスノキ、モクレン、スイレンなどとともに出現し、その後に、キンポウゲや、バラ、キク、マメの仲間などのさまざまな植物(真正双子葉類)が出現したのです。

平行脈は、たとえば原始的被子植物のドクダミや、真正双子葉類のオオバコの仲間などにも見られますし、単子葉植物のサトイモやサルトリイバラの葉は網状脈系です。ですから、脈系は、「双子葉植物と単子葉植物の進化によって網状脈と平行脈に分かれた」というのは間違いなのです。また、一般に平行脈といわれるイネ科の葉にも平行に走る葉脈の間をつなぐ細い葉脈があります。そういう意味では網状であるともいえるかもしれません。

平行脈の葉が立っている、というご質問ですが、平行脈のササ類の葉は水平に近い角度を保ちますし、網状脈のポプラの仲間には葉の立つものがあります。

それでは、長い葉が立つていることが多いのはなぜなのしょうか。
まず、長い葉がどのようにできるのかを考えてみましょう。

長い葉が伸びるとき、伸びているのはどこでしょうか。たとえば、ツンと突き出ているササの若い葉を引っ張ると、葉の付け根は柔らかく、かむと甘いのはごぞんじでしょう?じつは、あの柔らかい部分で細胞がさかんに伸びているのです。この時にも葉の先端には水を送らなければなりませんから、もちろん葉脈はあって、その中には導管(道管)もあります。しかし導管はかなり丈夫に作られていますので、伸張にともない引きのばされてこわれてしまいます。し
たがって、葉の基部では、導管が壊されては作られ、壊されては作られしているのです。このようなつなぎかえは、網状脈ではむずかしいだろうと思われます。長い葉では、大きな葉脈が平行脈となっているのはこのような理由なのかもしれません。

単子葉植物では、葉の基部はその葉よりも早く出た葉の基部に包まれることが多く、そのために、葉は直立してでてくる傾向があります。明るい場所では、葉を直立させておくと、光が下までよく入り、光合成生産にも都合がよいので、葉が直立するようなったのでしょう。このような直立葉の葉身には丈夫な中肋があり、葉を立てるのに役立っています。でも、暗いところでは、垂れた長い葉もよくみられます。ジャノヒゲはササなどはその例です。

寺島 一郎(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-05-27
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