一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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なぜ腐って倒れないのですか。

質問者:   自営業   松原秀臣
登録番号1621   登録日:2008-05-19
 生きている樹木に大きなちからが加わって折れたり、大きく傷つき木部がむき出しになっているのを時々目にします。しかしそこから腐ることなく、木部が乾燥して(乾燥丸太のように)極めて堅牢になっているのを知って驚くことがあります。
 これは道管組織内にチロースが作られ菌の侵入が妨げられた状態で乾燥が進んだと理解していいのでしょうか。他にも何か樹として大きな傷を負いながら腐朽の進行がなく、生存し続ける要因はありますか。
松原秀臣さま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。担当の柴岡と申します。林の中の倒木はどれも腐っているか腐りかかっていますが、木造建築物の木材は数百年も腐らずにいます。法隆寺の木材の場合など千年以上経った今も、新材と同じ強度を保っています。まず腐ると云う事について考えてみましょう。魚や肉や御飯などの食べ物が腐るということは、これらの食べ物にたかった微生物やカビにより、食べ物の成分であるタンパク質や澱粉が分解されるということです。さて樹木の木部すなわち木材ですが、主成分はセルロースです。食べ物を腐らす微生物やカビの殆どはセルロースを分解することができません。木材が腐りにくいのはそのためです。ところがキノコの仲間の菌類に木材腐朽菌と云うのがいます。この腐朽菌はセルロースを分解することができます。林の中の倒木が腐っているのはこの腐朽菌によるものと思われます。
そんな腐朽菌がいるのに木造建築物の材がなぜ腐らないかと云うと、腐朽菌が生育するのには水が必要だからです。材の水分含量が50〜100%だと腐朽菌は盛んに生育しますが15%以下では生育することができません。松原さんがご覧になった木の木部が腐らないのは水分含量が腐朽菌の生育に適さない15%以下だったからだと思います。腐朽菌の生育には酸素も必要です。酸素の供給を断つと腐朽菌は生育出来ません。貯木場で丸太を水のなかに入れているのはそのためです。腐るか腐らないかについてチロースは関係ないと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-05-21
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