一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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道管と師管はなぜ近接しているのか

質問者:   教員   けめ
登録番号1635   登録日:2008-06-01
先日、維管束の授業を行ったとき、生徒から次のような質問が出ました。

なぜ、道管と師管は近くを通っているのですか。一緒に束になることには、何か意味があるのですか?

教科書の図では、根では道管と師管はそれぞれ違うところを通っているように描かれています。そして茎になると、道管と師管はくっついて、維管束になるのです。
これはどうしてなのでしょうか?
植物の進化の過程で必然的にそうなったのでしょうか。

どうかご回答をよろしくお願いいたします。
けめ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

生物の形や働きで「どうして」とか「何故」というご質問にお答えすることはたいへん難しいことですが、多くの場合、「形の出来方」を詳しく見ると理解できるものです。また、「形の出来方」は生物の進化とともに変わってきますので、今見られるような複雑な(多様な)形ができあがったと考えるものです。ご質問は植物の進化系統学、形作りを研究されている基礎生物学研究所の長谷部光泰先生からお答えをいただきました。

発生過程を調べると根でも茎でも導管と篩管は同じ起源の細胞から生じます。従って、両者は近接しがちです。しかし、発生途中で、導管と篩管の間に別な組織が分化することもあり、そうすると両者は離れて見えます。根がその例です。茎や根を持つ植物(維管束植物)の祖先は、葉をつける茎や側根をつける根を持っておらず、二分岐する茎状の器官だけからできていました。維管束系は中心に導管が通り、その周囲を篩管がとりまいていました(原生中心柱:現存の植物ではヒカゲノカズラやクラマゴケなど原始的なシダ植物に見られます)。その後、茎と根の進化の過程で、茎は葉をつけるように、根は側根をつけるようにそれぞれ独立に進化しました。その進化の過程で導管と篩管の配列が変化していったと考えられています。

長谷部 光泰(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-06-05