一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉緑体光定位運動が見たい

質問者:   高校生   おたね
登録番号1637   登録日:2008-06-03
ひろばのコーナーで葉緑体光定位運動の様子が紹介されていましたが、自分で植物を使ってみる方法はありませんか?特別な顕微鏡などを使わずにLedを当てるだけで葉緑素が集まったり逃げていった後を見ることはできないでしょうか?
簡単な観察方法と注意点、適した植物を教えてください。ぜひ召してみたいと思います。
おたねさん

このコーナーに関心をお持ち下さりありがとうございます。今回は、首都大学東京で葉緑体光定位運動の仕組みの解明に取り組んでおられる門田明雄先生から観察方法をお教えいただくことにしました。なお、門田先生のホームページには葉緑体光定位運動の動画などもあると思いますので、ご参考にして下さい。

(門田先生のご提案下さる方法)
―簡単な微光束照射による葉緑体光定位運動の観察―

(概要)
葉緑体は運動性を示し、外部の光条件に依存して細胞内で移動する。強光からは逃げ(逃避反応)、弱光に対しては集まる(集合反応)。この実習では、観察用光源そのものを視野絞りによって微光束とし、オオカナダモの葉の一部に強光を照射することで部分的に葉緑体逃避反応を誘導し、観察する。

(準備)
顕微鏡:視野絞りのついているもの
植物材料:オオカナダモ
その他の材料:黒ビニールテープ、カッターナイフ、両刃カミソリ、ハサミ、ピンセット、スライドグラス、カバーグラス

(観察の実施)
A.プレパラートの作成
1. スライドグラスに2-2.5 cm長の黒ビニールテープを貼り(テープは無理に引き延ばさない)、中央部の1.5 cm角程度の部分をカッターで切り抜き、試料を入れる“Well(くぼみ)”とする。
2. オオカナダモの葉を適当な大きさに切り取る。
3. 1.のWellに2.の試料を置き、1滴の水とともにカバーグラスをかけ、マウントする。余分な水を除き、カバーグラスの4辺がテープに密着するようにする。Wellの中には気泡が入らないように注意する。

B.顕微鏡での微光束照射と葉緑体運動の観察
4. 顕微鏡が位相差用などになっている場合はコンデンサーターレットを回転して、その光学系を光路からはずす。
5. 顕微鏡にプレパラートをセットし、x4またはx10の対物レンズで細胞にピントをあわせる。この際、光源はできるだけ弱くしておく。細胞表面に葉緑体が一様に広がっている細胞群を実験に用いる。
6. 視野絞りをある程度絞り、視野絞りの像が細胞と同じピント面に結像するようにコンデンサーレンズを上下して調節する。
7. 対物レンズをx10またはx20程度にし、細胞にピントを合わせた後、もう1
度、視野絞りの像が結像するようにコンデンサーレンズを調節する。視野の中に見える細胞群の葉緑体が細胞表面に一様に広がっていることを確認する。視野絞りを最小にする(閉じる)。この状態で、一部の細胞群が微光束(視野絞りの像)によって照射されていることとなる。
8. 強光反応の開始:光源の電圧を上げ、照射部位の葉緑体の動き・分布に注意しながら、しばらく観察する。強光で照射されていれば、微光束照射された細胞群の表面に広がっていた葉緑体が逃避反応を示し、表面からいなくなる。15分程度で細胞の中に白く透明に見える、葉緑体がいない領域があらわれ、30分ぐらいで細胞中のかなりの部分が透明になる。視野絞りを広げて観察すると、緑の中に微光束照射された部分だけが白く抜けて見え、葉緑体が逃避反応していることがわかる。

門田 明雄(首都大学東京大学院理工学研究科・生命科学)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2008-06-08
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