一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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油と植物

質問者:   高校生   きこ
登録番号1638   登録日:2008-06-03
以前、油を微細な粒に加工して溶け込んだように見える水溶液に、おもしろ半分で植物の切花を生けたことがあります。すると2日後には花が乾燥してしまいました。枯れたのではなく、ドライフラワーのように水が上がらなくなったように見えました。これはなぜでしょうか?油が害を及ぼすには短期間すぎるので、私は道管に油分が詰まったのではないかと考えましたが、いかがでしょうか?またこれを確かめる簡単な方法があったら教えてください。
きこ さん

質問コーナーへようこそ。歓迎します。下記の質問ですが、内容がはっきりしないところあります。「油を微細な粒に加工して溶け込んだように見える水溶 液」とはどういう状態のものかわかりません。どんな油か(毒性のあるのか)、粒のサイズは、油の量はなど。また、サラダドレッシングのように油と水分を撹拌してできたエマルジョンのようなものなのか。でなければどのように加工してあるのか。もともと何も目的でつくられた水溶液なのか。花が乾燥したが「枯れたのではない」とありますが、萎れたのではないということですか。固い花(茎葉も含めて)は水分がなくなっても外見上萎れたように見えないものがあります。普通の生け花が2日で乾燥するというのはきわめて迅速です。ドライフラワーを作る時もそうはいきません。どんな花を使ったのですか。などなどです。だから、的確な回答になるかどうか分かりませんが、植物の吸水の基本的なことについて説明いたしますので、それを元に判断して下さ い。

[回答] 植物の吸水は通導組織の導管でおこなわれます。植物の個体では根が取り入れた水は茎の導管を通って主に葉に移動し、気孔から空中へ蒸散されます。したがって気孔が閉じていると、原則として水の移動はおこりません。一本一本の導管は非常に細い毛細管で、根から葉の先までその中を水が満たしています。つまり、水柱ができていると考えて下さい。気孔の細胞から水分が失われると、導管のなかには負の圧力が生じ、水が引っぱりあげられます。水の分子は凝集力という力で引き合っていますので、導管の中を順次下から上へと水は移動することになります。しかし、導管に空気などが入りこの水柱が切れると、水の移動はなくなり、植物は萎れ、最終的には枯れてしまうことになります。切り花で水切りをするのは空気が導管に入らないようにするためです。あなたが使った切り花はどういうものか分かりませんが、水溶液に入れる時に切り口から空気が入ってしまったのかもしれません。また、どういう性質のものか分かりませんが、油が水に溶け込んだようにするには、一つ一つの油の分子を水になじみやすい分子でコーティングしてあるとおもいますが、そうするとその粒子が大きすぎて導管の切り口をふさいでしまったのか、あるいは詰まってしまったのかもしれません。最初にも書きましたように、質問だけからでは確かめる簡単な方法はちょっと思い浮かべることはできません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-06-11