一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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閉鎖花の花粉について

質問者:   一般   なかなか
登録番号1647   登録日:2008-06-09
閉鎖花の花粉について教えて下さい。
閉鎖花を観察しますと、花粉が明らかに確認できるもの(ホトケノザなど)と、実体顕微鏡で見ても、どうしても花粉が確認できないもの(キキョウソウなど)があります。
このように閉鎖花では、花粉が葯から出ないものもあるのでしょうか? 
また、葯から出ない花粉があるとすれば、葯から出る花粉とは、形態などでどこか違っているのでしょうか?
よろしくお願いします。
なかなか様

大変長いことお待たせしました。頂いたご質問の回答を、東北大学名誉教授の大橋広好先生にお願いいたしました。以下の回答でも分かるよう、大橋先生は丹念に調べてくださいました。しかし、どうも閉鎖花の花粉に関する研究は充分なされていないようです。どうも未開拓の分野のようなので、ご自分の研究テーマとしたら面白いのではないかと思いました。

大橋先生のご回答

一般に,閉鎖花といってもいろいろなタイプがあります。開放花(普通にいうところの花)と閉鎖花との形態差がわずかななものから、非常に異なるものまでありますが,多くは閉鎖花は「普通にいう花」の芽(花芽)の形に似ていて,未成熟の花と見えるようです.閉鎖花について全体的に記述されている文献は見付かりませんでした.無いはずはないと思うのですが,意外に見付からずに残念です.

多分,花粉の形態も開放花と閉鎖花との形態差と関連して異なるのではないかと思われますが,あるいは既に調べられたとしても,その種類では花粉レベルまでは異ならなかったとすれば,報告をしないということもあるのかもしれません.どうも,同一種での花の形態差に対応した花粉の形態差について,あるいはそれらの関係についての報告は日本ではなされていなさそうです.

閉鎖花と開放花の花粉形態を比較して「違いがある」とした論文は,探した限りでは,Lord EM and Eckard KJ 1984.
Incompatibility between the dimorphic flowers of Collomia grandiflora,
a cleistogamous species. Science 223: 695-696.
があるようです.今回これを読んではいませんが,この論文から多分,花粉の違いについてさらに詳しい情報が得られると思います。

私たちがよく調べたのはイヌハギの閉鎖花ですが (Nemoto, T. and Ohashi, H.
(1997). Morphology and variation of cleistogamous flowers in Lespedeza tomentosa (Thunb.)
Siebold ex Maxim. (Leguminosae) in relation to variation in
inflorescence form. Journal of Japanese Botany 72:
315-328),花粉形態は調べませんでした.根本智行氏によれば,光学顕微鏡レベルで花粉壁の厚さに違いがあるように見えた記憶があったそうです。

結局,時間ばかりかかってしまいましたが,質問者にも分かり易いような,日本の植物に基づいた,答えは見付かりませんでした.日本語の花粉学の本はかなりあるのですが,多分日本植物の閉鎖花についての知識が十分でないために,ホトケノザもキキョウソウも含めて,調べられていない可能性が高いように思います.

大橋 広好(東北大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-08-01
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