一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物細胞内の浸透圧は?

質問者:   高校生   みい
登録番号1648   登録日:2008-06-09
本を読んでいて、塩害にさらされた植物の浸透圧は、-0.212程度でした。

一般的に、塩害にさらされていない植物体内の浸透圧はどのくらいなのですか?

塩はどのくらい浸透圧を下げているのか気になります。

よろしくお願いします。
みい さま

ご質問頂いた文の中で、塩害を受けると植物の浸透圧が -0.212程度になるとありますが、単位が記されていないので、数字の意味が分かりません。また、塩害の程度は植物の種類によって大きく違いますので、これからの質問の時は、どのような植物で、どの程度の塩害であったかを記して下さい。

浸透圧は細胞の中の諸成分のモル濃度の合計に比例するため、モル濃度で相互に比較することがしばしば行われています。植物細胞は液胞など水の占める割合が多いため、細胞中の成分のモル濃度は、(植物の種類によって大きく異なりますが)一応、〜0.4 Mとすることができます。一方、塩害を引き起こす海水の諸成分(主にNaCl)のモル濃度をあわせると約0.5Mです。従って、植物が海水の塩分を吸収してその植物の水分が海水と同じ濃度の塩分を含むようになった時、細胞内のモル濃度、すなわち、その植物の浸透圧は、海水を吸収する前の2倍近くになります。

塩生植物以外の多くの植物は海水をこれだけ吸収すればほとんど塩害によって枯死してしまいますが、実際の塩害はもっと少量の海水の塩分によって生じます。また、植物の塩害の原因は浸透圧の増加のみが原因ではありません。海水の主成分であるNaClのうち、Naイオンが“毒性”を植物細胞に示すためと考えられています。植物の生育に必要なKイオンは少し濃度が高くなり、浸透圧が高くなっても、Naイオンのように植物に害を与えません。いろいろな植物についての塩害については、本質問コーナーで、これまで、いろんな観点から議論されていますので、質問登録番号0126, 登録番号0412, 登録番号0578, 登録番号0894, 登録番号1048への回答を参考にして、その原因を考えてみてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-08-19