質問者:
会社員
宮原賢士
登録番号1651
登録日:2008-06-11
4月の後半に栃木のとある苺農園3軒程に苺狩に行ってきました。その内ある1軒は群を抜き、摘み取る苺が全て甘く、実もしっかり艶も最高の苺でした。果実の甘みを増す手段には甘いものを与えるという、その場合のメカニズムを教えて下さい
あまりの違いに、農家さんに「ここの苺は何故こんなに甘いのですか?」の質問に対し、「企業秘密だけど、糖蜜とステビアを与えてるんだよ、葉っぱにかけてあげるんだよ。そうすると、苺があまくなるんだ」、と教えて頂きました。確かに糖蜜は、読んで字の如くかなり甘いような物で、ステビアはよく甘味料として添加されているだけに甘いものですよね。このような甘いものを葉っぱや実にかけてあまくなるのでしょうか?よく葉っぱの裏から水分や肥料を吸うとされていますが、同じように甘いものを吸収し、それが実に送られて甘さを出しているのでしょうか?苺だけでなく他の果物も同じなのでしょうか?そこの甘くなる「メカニズム」を教えて下さい。宜しくお願いします。
宮原賢士様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
[回答]
人が感じる果実の甘味は糖分の含有量と共に酸味成分の含有量も関係しています。糖と酸の比が1より大きい時に甘味として認識されます。したがって、とても甘いというのは酸味に比して糖度がずっと高い場合です。ところで、イチゴとか果実の質(甘味など)を高めるにはいろいろな農薬が使われてきました。
これらは、土壌に加えたり、葉面に散布したりします。しかし、使用者が中毒を起こしたり発ガン性だったりして、使用禁止になったものが多いです。現在は微量栄養分やアミノ酸などを中心に葉面散布で植物に養分を与えて成長や果実の発育を助長する方法がとられています。
葉はクチクラ層によって覆われていますので外から与える物質は不透過と考えられますが、実際にはいろいろな物質が透過できます。葉の裏の気孔から取り込まれるという考えがありましたが、気孔の内側へは水溶液は入りにくいし、気孔がない葉の上面でも散布した物質は吸収されますので、クチクラを通って吸収が起きていると思われます。だから、糖類やステビアを葉面散布すれば、葉の細胞に取り込まれ、体のほかの部分へ輸送されるでしょう。
イチゴの栽培に関しては、栃木の二宮町では薄めた糖蜜やステビアの溶液を葉面散布して、品質の高い「とちおとめ」を生産しているようです。糖蜜の成分である各種の糖が吸収されると、一部は呼吸に使われ化学エネルギーに変わるでしょうし、一部はほかの化合物に変えられて、新しい細胞のを作る材料として使われます。また吸収された糖の一部が果実に転流されて、その甘味の成分となることはあるかもしれません。ステビアは普通の植物は合成しませんので、イチゴなどに与えれば自然でない化合物ということになります。ステビアは当初甘味料として使われはじめ、そのうち、発ガン性などで問題視されたこともありましたが、現在は人工甘味料としてよりは、農薬のような感覚で農業に、畜産に、魚の養殖にと様々なところで使われていますが、農薬として認可されたものではありません。その主な働きは抗酸化剤としての作用です。イチゴの場合も、甘味を直接増加させるのではなく、植物体を丈夫にすることにより、良い果実を成らせるという効果があるのではないでしょうか。糖蜜もステビアもそれらが直接果実の甘味の増加の元になっているかどうかは実験をしてみなければ分かりません。あるいは、園芸関係の研究論文を調べればすでにそういう報告があるのかもしれません。ステビアが果実の甘味の一部になっていれは、味が違ってくるはずです。糖蜜が取り込まれた場合は、ある意味で、植物が光合成を盛んにしたことと同じですから、たとえ、取り込まれた糖蜜の成分が直接果実の甘味成分にならなくても、果実転流される糖分がトータルに増加するでしょうから、その結果として甘味が増するということでしょう。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
[回答]
人が感じる果実の甘味は糖分の含有量と共に酸味成分の含有量も関係しています。糖と酸の比が1より大きい時に甘味として認識されます。したがって、とても甘いというのは酸味に比して糖度がずっと高い場合です。ところで、イチゴとか果実の質(甘味など)を高めるにはいろいろな農薬が使われてきました。
これらは、土壌に加えたり、葉面に散布したりします。しかし、使用者が中毒を起こしたり発ガン性だったりして、使用禁止になったものが多いです。現在は微量栄養分やアミノ酸などを中心に葉面散布で植物に養分を与えて成長や果実の発育を助長する方法がとられています。
葉はクチクラ層によって覆われていますので外から与える物質は不透過と考えられますが、実際にはいろいろな物質が透過できます。葉の裏の気孔から取り込まれるという考えがありましたが、気孔の内側へは水溶液は入りにくいし、気孔がない葉の上面でも散布した物質は吸収されますので、クチクラを通って吸収が起きていると思われます。だから、糖類やステビアを葉面散布すれば、葉の細胞に取り込まれ、体のほかの部分へ輸送されるでしょう。
イチゴの栽培に関しては、栃木の二宮町では薄めた糖蜜やステビアの溶液を葉面散布して、品質の高い「とちおとめ」を生産しているようです。糖蜜の成分である各種の糖が吸収されると、一部は呼吸に使われ化学エネルギーに変わるでしょうし、一部はほかの化合物に変えられて、新しい細胞のを作る材料として使われます。また吸収された糖の一部が果実に転流されて、その甘味の成分となることはあるかもしれません。ステビアは普通の植物は合成しませんので、イチゴなどに与えれば自然でない化合物ということになります。ステビアは当初甘味料として使われはじめ、そのうち、発ガン性などで問題視されたこともありましたが、現在は人工甘味料としてよりは、農薬のような感覚で農業に、畜産に、魚の養殖にと様々なところで使われていますが、農薬として認可されたものではありません。その主な働きは抗酸化剤としての作用です。イチゴの場合も、甘味を直接増加させるのではなく、植物体を丈夫にすることにより、良い果実を成らせるという効果があるのではないでしょうか。糖蜜もステビアもそれらが直接果実の甘味の増加の元になっているかどうかは実験をしてみなければ分かりません。あるいは、園芸関係の研究論文を調べればすでにそういう報告があるのかもしれません。ステビアが果実の甘味の一部になっていれは、味が違ってくるはずです。糖蜜が取り込まれた場合は、ある意味で、植物が光合成を盛んにしたことと同じですから、たとえ、取り込まれた糖蜜の成分が直接果実の甘味成分にならなくても、果実転流される糖分がトータルに増加するでしょうから、その結果として甘味が増するということでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-09-17
勝見 允行
回答日:2008-09-17