一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

葉緑体の整列

質問者:   高校生   ねこ
登録番号1676   登録日:2008-06-29
オオカナダモの原形質流動について研究しています。
顕微鏡で細胞を観察していて気づいたのですが、正常な細胞の他に、原形質流動をしていない、葉緑体が整列しているように等間隔に並んでいる細胞があります。
光をあてても、温度を変えても原形質流動をしません。
また、葉を切断して観察したとき、切断された細胞の周囲の細胞に多くみられる気がします。
この細胞は死んでいるのでしょうか?死んでいるとしたら、死ぬと葉緑体が整列するのはなぜですか?
ねこ さん

本コーナーに質問をくださりありがとうございます。
少し遅くなりましたが、ご質問には大阪大学で原形質流動の仕組みなどについて研究している高木慎吾先生がお答えくださいました。ご参考にしてください。

(高木先生が下さった回答)
オオカナダモを始め、いくつかの植物において、光によって原形質流動が誘発されることが知られています。原形質流動は、光以外の刺激、例えば傷害(細胞が傷つけられること)、ある種のアミノ酸、植物ホルモンなどによっても誘導されます。質問コーナーの過去の質問について「原形質流動」というキーワードで検索をかけ、それらに対する回答も参考にしてください。
 
さて、僕もカナダモの細胞を久しぶりに観察してみました。いつ見ても、美しい細胞だと感じます。原形質流動を示さなかった細胞は死んでいたと思われます。「葉緑体が整列しているように等間隔に並んでいる」という状態について、葉緑体が細胞の側面の細胞壁に沿って並んでいたのか、細胞全体に散らばっていたのかがわからないのですが、側面の細胞壁に沿って並んでいたとすると、原形質流動をしながら死んだものと思われます。隣の細胞が死んだ時、その細胞からの刺激(電気的な信号や細胞が壊れることによって放出されるアミノ酸などの化学物質など)によって原形質流動が誘発され、ATPが枯渇して死んでしまったのでしょう(原形質流動のエネルギー源はATPです)。
 
また、ある細胞が病原菌などに感染した際、周りの細胞が積極的に死ぬことにより(過敏感反応と呼びます)、病原菌がそれ以上広がることを食い止める仕組みがあります。このときも、原形質流動など、細胞質の運動が誘発されることが知られています。
 
すなわち、「死ぬと葉緑体が整列する」のではなく、葉緑体が整列して流動している状態のまま死に至った可能性が高いと思います。
 
生き物を素直な眼で見て疑問を抱くことは、自分の世界をいろいろな方向に広げるきっかけとなります。今後も、そのような姿勢で研究を続けてください。

高木 慎吾(大阪大学大学院・理学研究科生物科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2008-07-15