一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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フウセンカズラの実がならない。

質問者:   一般   みどり
登録番号1693   登録日:2008-07-15
室内で、植木鉢にてフウセンカズラを育てています。
室内では虫による受粉がされないために結実しにくいという事を知り、人工授粉を試みています。

方法は、落ちている花をピンセットで分解して雄しべを取り出し、
朝10時くらいまでに雌しべに撫でつけるという方法です。
現在、2つの実がなっていますが、その後パッタリです。

多数咲く花の中で、ごく少数のものだけ、額のような部分が大きくなり、緑色も濃くなっていくものがあるので、
これは受粉して実になるものだと楽しみに待っているのですが、
いつの間にか落ちてしまいます。 今まで8つ程落ちてしまいました。
(そのような状態にもならず落ちてしまう花が大多数です。)

水はほぼ毎日一回。受け皿に少し水が出て来る程度の量をあげています。
肥料は、市販のアンプル液肥を、毎日の水遣りの際に少量混ぜて与えています。
日光は、室内ですが日の当たる窓際に置いています。

①考えられる問題点はなんでしょうか?
②額のような部分が大きくなったという事は、 受粉は成功していたと思って良いのでしょうか?
③雌しべに花粉がつきにくいのかなと思い、
 最近、若干湿らせたティッシュのコヨリで雌しべの先を撫でて湿らせ、
 その後、花粉をつけるようにしてみたのですが、この方法はいかがでしょうか?

よろしくお願いいたします。
みどり さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

ご質問はむしろ園芸相談で、もっと適切なサイトがあると思いますので、そちらをお調べいただきたいと思います。ここでは、植物生理学的に気がついた点を述べておきます。

植物の結実の過程は、植物自体の生理状態や環境の影響を思ったより受ける複雑なものです。

1)フウセンカズラを鉢植えで室内栽培をすることがあまり適切とは思えません。この植物は外来種で、日当たりのよい、比較的乾燥気味の条件を好みます。室内では、日照も悪く(ガラス越しはかなりの光エネルギーを落としています)、どちらかというと水分過剰気味になりやすい(毎日の水やり)ので、健全な条件ではないことが考えられます。鉢を昼間はなるべく日当たりのよい外に出しておくようにされたらどうでしょうか。毎日、液肥を与えておられるようですが、ふつうの栽培感覚では多すぎると思われます。1000分の1程度に薄めた液肥は一週間に一度程度で十分でしょう。人工受粉されるとき、「落ちている花」から雄しべを取り出したとのことですが、すでに花粉が発芽能力を失っている可能性があります。花粉の寿命は植物種によって大きく違い、短いものでは開花後1時間ももたないものもあります。フウセンカズラの花粉の寿命は分かりませんが「落ちた花」でなく、「咲いたばかりの新鮮な花」の花粉を使うことが必要でしょう。

2)フウセンカズラの袋は、ホオズキの袋のように萼ではなく果皮です。受精が成立すれば子房(果皮を含みます)が膨れはじめます。しかし、果実として定着する(着果)ためにはホルモン供給などの生理的条件が影響します。植物が健全な状態でないと、生理的条件も健全になりませんので、花が咲いて、子房が膨らみはじめても、果実が落ちてしまいます。果樹栽培の世界では、ジューン・ドロップ言って、6月頃にたくさんの未熟果実が落ちてしまう現象があります。栽培上の問題です。

3)雌しべの先端(柱頭)は花粉が付着しやすいようになっています。水などで濡らす(雨天時)ことはむしろ花粉の定着率、発芽率が低下します。登録番号1685を参考にしてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-07-16