一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ホテイアオイの根の秘密

質問者:   小学生   りょうま
登録番号1704   登録日:2008-07-22
こんばんは。
僕は、小4の研究で、「巨大ホテイアオイを育てよう。」という目標で容器・容器の中身、置く場所を変えて、そだてました。
その結果、

・適度な日照時間(夜は寝ないとダメ)
・水だけでなく、土を入れた大きな容器が良い。
・気温は、25℃〜35℃、水温は、20℃〜25℃の時に大きくなる。ということがわかりました。

でも、浮遊植物なのに、土で育てたほうが 水で育てたより大きくなりました。
土で育てたホテイアオイは、ふきがなくなってしまい、とても ホテイアオイには見えませんでした。
この2種類のホテイアオイの根を比べると黒いクネクネのものと薄茶色と白の曲がっていない物でした。
全然違うものに育っていったホテイアオイのことが とても 不思議でした。
この違いが出たのは、ホテイアオイの根が入っていた容器の中身の違いが原因だと予測しました。
なので、今年は、ホテイアオイを変化させた原因を研究したいとおもいスタートしました。

僕は、根に何か秘密があるとおもいます。
根が 環境に影響を受けて 変化してしまい、その変化がふきや葉の見た目を変えてしまったと思います。

それを調べるために、今、2リットルのペットボトルに水100%〜土100%まで、土と水の割合を変えた物を用意し、ホテイアオイの成長の差が出るか調べています。
ただ、根の違いがいつ頃、どんな感じで出るのか 土が多いと見れません。
根の変化を確認する 何か よい方法がないでしょうか?

ほかに、

・葉を取ってしまったホテイアオイが元気に成長するか?
・ホテイアオイが水温上昇を抑える効果がないか?
・ほかの水生植物が土で育つか?逆に、土で育つ植物が水で育つか?
ということもやっています。

環境で変化する植物の秘密を調べるためのよい方法があったら、教えてください。
よろしくおねがいします。
りょうま 君

質問コーナーへようこそ。歓迎します。よく調べていますね。植物のことに関心をもって自分でいろいろ調べようとする熱意はすばらしいことです。一つの観察から新しい疑問をもって、仮説をたてそれを解き明かそうとする態度は科学者ですね。ところで、まず「根の成長を観察する良い方法」についての質問に答えます。土の中ので成長している根を時間を追って直接観察する方法はありません。根だけ液体培地とか透明な寒天培地の中で育てるような装置を使え ば観察できますが、君の実験の場合は土壌ので育てるのですから、この方法はだめですね。もっとも、水100%から数10%までは見られるかもしれませんが。もし、なんとか観察したいなら、何10本も均一なホテイアオイの苗を準備します。例えば、水100%から土100%までの組み合わせが5組あるとします。そして根の成長の観察を一週間毎に2か月続けたいとします。つまり観察(根の長さ、数など)を合計8回するわけです。そこで、一回の観察ごとに根を引き抜いてしまい、容器から取り出して十分に観察測定します。測定に使った植物は元に戻さず捨てるか、別にします。こうすると、一回の観察に5個のホテイアオイが必要です。観察は合計8回(2か月)おこなわれますから、5×8=40のホテイアオイが必要です。でも、ほんとうはこれだけでは駄目なのです。これでは、1回の観察にそれぞれの培地の組み合わせで1本のホテイアオイしか使っていないことになりますね。これがくせ者なのです。生物の実験を行うときは、特に、比較観察したり、なにか薬品を与えたり、条件を変えたりしてその影響を見る場合は、それぞれ複数の植物体(動物でも同じ)使います。生物材料はクローン生物(持っている遺伝子が全く同じ)でない限り、均一であるとはいえません。だから、もし1個体のホテイアオイだけを対象にすると、例えば、50%の土を含む培地のものは著しく根の伸びが良かったとしましょう。しかし、それは用いた個体がたまたたまそういう性質のものだったのかもしれません。複数の個体を使ってどれも同じようだったら、まず信用してよいでしょう。そこで、君の実験のことを考えてみましょう。ホテイアオイをあまり沢山使うことは場所的にも大変でしょうから、次のようにしてみてはどうですか。まず、水と土の割合の組み合わせをみず100%、水50%:土50%、水10%:土90%の3組にします。土100%は植物に水をやらないことですから、枯れてしまいます。観察は2週間に一回2か月で合計4回。それぞれの組み合わせに3本づつのホテイアオイを使います。2本でもいいのですが、もし2本が全くばらばらの様相を示したら、どちらを信用して良いか分からないでしょう。3本あれば、うち2本が同じ様相を示していれば、まずそうだとみなしても悪くはありません。したがって、合計36本のそろったホテイアオイが必要です。もちろん観察の回数を減らせば本数も少なくてすみます。以上の実験では、ペットボトルの大きさ、栄養分、日照などほかの条件はできるだけ同じにしなければなりません。土はできるなら、栄養分のない人工土を使い、全ての組み合わせで養分は一定量同じように供給してやる必要があります。でないと、成長に差がでたとき、それば培地の物理的条の違いなのか、養分のちがいなのかは分からないからです。もうひとつ重要なことは、土の混じった培地で水分を常一定にしておくということです。植物の成長に一番大きな影響を持つのは水分の供給ですから。また、根の成長は酸素(空気)の供給がないとだめです。それも考えて下さい。ところで、ホテイアオイは水面に浮いて成長すると株が別れて増えていきますが、花が咲いて種子ができると、発芽してできた芽生えは水底で生育し、泥の中に根を張ります。しかし、葉が複数枚にまで成長すると、上部がちぎれて水面に浮上しふき(浮器)ができてホテイのようになるのです。だから、水に浮かばなくても沢山水を含んだ土壌でそだてると、立派に育ち、花も咲かせます。ふきは葉の一部で葉柄がふくらみ、水面に浮くように変化したものです。したがって、水面に浮かぶ必要がなければフキを発達させる必要はないのです。ではなぜ、水底でそのまま育たないのかというと。多分ホテイアオイにとっては繁殖の手段として水面に浮くようになる方は有利なのでしょう。水面に広がれば十分に光を受けることもできます。その証拠に、ホテイアオイは繁殖力が旺盛で、世界(日本の一部でも)では環境汚染の厄介者扱いされることが多いのです。りょうま君はほかにもいろいろ実験を計画しているようですね。面白い結果がでたら、また教えてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-07-28