一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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収穫されたきゅうりの種の成長

質問者:   中学生   りん
登録番号1708   登録日:2008-07-25
畑から収穫してきたきゅうりをそのまま台所に何日か放置しておいたら、だんだんきゅうりのおしりの方がふくれてきました。その逆に茎についていた上の方は、だんだん細くなってしわしわになりました。ふくれたところを包丁で切ってみると、種が大きくなっていて、上の方も切ってみると中は白くなってみずみずしさもなくなっていました。これは水分がおしりの方に集められたと考えていいのでしょうか。ちなみにきゅうりは寝かして放置されていました。きゅうりは収穫された後も子孫を残すために生きているのでしょうか。このことを夏休みの自由研究にしようと思っているのですが、どんなふうに研究を進めてまとめていけばよいでしょうか。また、光合成も関係ありますか。よろしくお願いします。
りん さん

質問コーナーへようこそ。歓迎します。面白いことに気付きましたね。いろいろなことに関心をもって不思議だなと思うことはとても大切です。さて、収穫したキウリがそのまま放置しておいても成長をつづけるかということですが、ふつうは考えられません。一般に果実(生物学的にはキウリも果実です。)は、完熟する前に収穫して適切に放置すると、次第に熟していきますが、これは成長といいません。観察したキウリは内部にあるていど種子ができていたものか、まだ、完全に未熟だったのか。放置した場所は明るいところか、暗いところか。乾燥しやすい条件だったのか。お尻ははじめに比べてどの程度ふくれあがったのか。などなどがはっきりすると良いですね。果実が成長するためには、また、内部で種子が形成されるためには、栄養分が供給されないといけません。果実が茎についているときは、栄養分は葉(光合成で養分をつくります)やほかの部分から「ふるい管」という組織を通って供給されます。もちろん水も必要です。水は根から吸い上げられて「導管」という組織で送られてきます。果実を茎から切り取ってしまうと、栄養分や水の供給が断たれるので、果実は生長を続けることができません。それに、そのまま放置すれば水分が蒸発で失われていきます。ところで、お尻が太ったというのはどの程度なのか想像できませんが、放置している間にキウリの上部から下部へ水分が移動して水ぶくれみたいになったのかもしれません。その分上部がしおれてしまったのでしょう。下の太った部分で種子が大きくなっていたとのことですが、どの程度なのでしょうか、茎についているキウリでも果実によっては、下部の方が早く種子が大きくなる場合もみられます。もしかすると、そのキウリは初めから下部で種子が大きかったのかもしれませんね。私たちがふつう食べるキウリはまだ未熟なものです。種子ができていても、白っぽく種子の皮(種皮)も柔らかなものです。種子が発芽できるように完成する頃は種皮は固くなり、果肉(食べる部分)は柔らかくなり、果実の皮は(果皮)は黄色に変化しています。これが「熟する」ということです。君が観察したキウリは食べるためにとってきたものだと思いますので、まだ未熟ですね。だとすると、それが部分的にも成長して種子を完成させることは考えられません。夏休みの自由研究にしたいということですが、それが研究のテーマになりうるかどうか疑問です。しかし、次のようなことを試みてみれば良いかもしれません。キウリを果実だけ切り取ってくるのではなく、茎も一部くっつけて収穫し、茎の切り口から水分と養分を供給してやるのです。養分は砂糖の溶液がよいでしょう。切り花に使うときと同じくらいの濃さ(砂糖小さじ一杯を2リットルの水に溶かす)で良いでしょう。ただし、バクテリアが繁殖しやすいので、毎日新しい溶液と交換したらよいでしょう。茎の切り口から確実に水が吸われるよう、切り花の水切りの要領でやってみてください。お母さんに聞けば分かると思いますよ。使うキウリの大きさは決めておいて、あらかじめ中の種子の発達の具合を調べておきます。茎の切り口から供給する水の中にいろいろな物質をいれてその影響をみてもよいのではないでしょうか。切り取ったキウリの果実をただ放置しておいて、何かを調べるという研究は思い付きません。でも、収穫したキウリの保存/貯蔵のあり方を調べるという目的で、温度の違い、明るさの違い、水分(霧吹きで与える)、密封したところに置く、等いろいろな条件で放置するという方法はありますが。工夫してみて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-07-28
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