一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の分布

質問者:   大学生   ヤギ
登録番号1710   登録日:2008-07-25
ここのサイトで進化のことなどが述べられているのを見て、ふと思ったのですが単子葉類と双子葉類の分布の違いはあるのでしょうか。
有名なインターネットの語句検索サイトの単子葉類の項では、葉の形から草原において多く見られるとありました。また、他の河川の植物調査の報告書では双子葉類が約7割、単子葉類が3割を占めていたとありました。
進化のためにその環境に適応してきた結果かもしれませんが、単子葉類と双子葉類の住み分けというのはあるのでしょうか?
ヤギ様

“みんなのひろば”へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を東京大学で植物生態学の研究をなさっておられる寺島一郎先生にお願い致しましたところ、以下のような詳しい回答をお寄せ下さいました。しっかりと勉強して下さい。

寺島先生のご回答
まず、草本はどういうところで優占するかを考えてみます。極地や高山を除く陸上の大部分で、水分が過剰ではない程度に十分に存在すれば、森林が成立します。樹木は、光合成産物を有効に使うという意味では決して草本植物よりすぐれているわけではありません。
高いところに葉を保ち、幹でそれを支えますので、光合成を行わない大量の細胞を養わなければならないからです。もちろん幹の内部の細胞は死んでいます。樹木は、一旦形成した内部は樹脂で固めて殺しておいてその周りにへばりついて生きているわけですが、やはりそれでも幹の生きた細胞の量は馬鹿になりません。植物の呼吸量/光合成量の比率を比べると、草本が25〜40%なのに比べて大きな木は50%以上、甚だしい場合(熱帯多雨林の大木など)は80%にものぼると言われています。しかし、水が十分にあって、樹木が生えてしまうと、草本は主役にはなり得ません。降水量が少なくなり、それに伴い光合成がやりにくくなると、うんと呼吸をしてしまう樹木が存在しえなくなります。こうなると草本植物の出番です。樹木が居ない明るい場所に、適度の乾燥に耐えて生える植物は単子葉類、特にイネ科の植物が多いようです。草原というと思い浮かべる、サバナ、ステッペ、プレーリー、パンパスなどの主役はイネ科草本です。強い光のもとでも葉が立っていますから、葉が実際に受ける光はそれほど強くありません。また気温が高い乾燥地では、CO2濃縮回路をもつC4植物のイネ科植物の独擅場となっています。

逆に双子葉植物が目立つのは、やや暗い場所ではないでしょうか。
暗いところで光を集めるためには、広い葉を水平に保つと有効です。そういうところでは、単子葉植物も葉を立ててはいないようです。亜高山帯の樹木が生育しにくい立地(河畔、雪渓近傍など)には高茎草原が発達します。イネ科は見られず、多くの背の高い多年生の双子葉植物が観察されます。これについては種々のウェブサイトで写真が見られます。

寺島 一郎(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-08-12
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