一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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原形質流動

質問者:   高校生   ぱんだ
登録番号1715   登録日:2008-07-29
オオカナダモの原形質流動を観察したのですが、水槽にいたオオカナダモを採取してすぐ観察すると、葉緑体が細胞の全体に広がっていました。
このサイト内で過去の質問を検索したところ、細胞内に液胞があるので、葉緑体は押しのけられ細胞壁に沿って原形質流動をするとあったのですが、この場合液胞はどうなっているのでしょうか?
オオカナダモの葉は十分成長したものを使いました。液胞がないとは考えられません。
また、ほぼすべての細胞の葉緑体がこのようになっており、観察を続けるうち、通常の原形質流動を開始しました。
ぱんだ様

日本植物生理学会みんなのひろばへ質問どうも有り難うございました。回答が遅れまして申し訳有りません。
回答を藻類の原形質流動がご専門の、大阪大学理学部の高木慎吾先生に御願いして回答を頂きました。

徳富 哲(日本植物生理学会広報委員長)

注意深く観察していますね。葉緑体が光条件の変化にしたがって細胞内で動くことが多くの植物で知られています。葉緑体の光定位運動と呼ばれる現象です。植物細胞をティッシュペーパーの箱のような直方体の箱にたとえると、液胞は、その箱の中に風船を押し込んだようなイメージです。風船の中は液胞液で満たされており、細胞質は、風船と箱の壁との間のごく狭い空間に、直方体の6面すべてに沿って存在します。葉緑体は細胞質中に存在し、弱い光の下では、直方体の上および下の面に沿って集まります(集合反応)。強い光の下では、側面に沿って集まります(逃避反応)。前者は弱い光の下で光合成の効率を上げるための、後者は強い光による傷害を避けるための反応と考えられています。
採取前、おそらくオオカナダモの葉は弱い光の下に置かれていたのでしょう。そのため、葉緑体は細胞の上下の面に集まっていたと予想されます(集合反応)。これを顕微鏡で見ると、細胞全体に広がって見えます。顕微鏡観察に用いる光は、植物にとっては強い光です。観察を続けているうちに葉緑体は側面へ移動し(逃避反応)、原形質流動するようになります。
葉緑体の光定位運動は、非常に興味深い現象です。これまでにどんなことが調べられてきたかについては、参考図書を読んでみてください。
参考図書:植物まるかじり叢書2「植物は感じて生きている」(瀧澤美奈子・著、日本植物生理学会・監修)化学同人

高木 慎吾(大阪大学理学部)
 
回答日:2008-08-19
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