一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

植物の葉表面のワックス組成

質問者:   教員   北の化学物理屋
登録番号1721   登録日:2008-08-01
水をよくはじくハスの葉は表面が細かい構造物(突起物)によって覆われていますね(先日、朝露をはじく雑草の葉を電子顕微鏡で観察したところ、うろこ状の突起が葉の表面を覆っている様子が観察することができ、とても美しくて感動しました)。一般的に細かい表面構造に覆われた植物の葉が水をはじく現象はロータス効果として知られていますが、他方の葉の表面構造物をつくっている物質(ワックス)や成分の共通点などについては調べられているのでしょうか?例えば、カルナバワックスでは主成分がセロチン酸ミリシルやミリシルアルコールが主成分ということですが、他の植物の葉でも同じなのでしょうか?よろしくお願いいたします。
北の化学物理屋 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物の表面を覆っている物質、いわゆるクチンと上クチクラ(クチクラ外)物質、通称Plant Waxの実体は何かとのご質問ですが、残念ながら「高級不飽和脂肪酸、その重合物および高級アルコールと高級不飽和脂肪酸のエステルからなる蝋をはじめトリテルペン、ステロイドなどを含む」「植物種あるいは同一種でも組織、生理状態によって組成が非常に異なる」という程度のことしか分かっていないようです。構成単位として炭素数16-18の脂肪酸やエポキシ脂肪酸なども含まれるとする報告もありますが全体像ははっきりしていません。植物の表皮の外側には非親水性の物質が分泌されて透明な層、クチクラを形成しています。水の蒸発を防ぎ、微生物の侵入を防ぐ効果があり植物個体の生存には重要な働きをしています。熱帯地域の植物はもちろんのこと温帯地域でも乾燥地や海岸に生育する植物ではクチクラの発達がよく、常緑照葉樹と言われています。このように普遍的に存在するのですが、詳細な成分分析は産業的に利用されているワックスに限られています。しかし、近年はクチクラの防御機能が植物の環境ストレス抵抗性と関連することが注目され高級脂肪酸、高級アルコール、高級アルカンやそれらの重合に関与する遺伝子の解析がなされています。専門的内容になりますので参考文献をあげることに止めます。

1.Dusty Post-Bittenmiller, Annual Review of Plant Physiology and Plant Molecular Biology, Vol. 47, p.405—430, 1996
2.Anthony A. Miller et al. CUT1, an Arabidopsis gene required for cuticular wax biosynthesis and pollen fertility, encodes a very-long-chain fatty acids condensing enzyme. Plant Cell, Vol. 11, p.825—838, 1999
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-08-07
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内