一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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多くのの植物は光をその植物全体で効率良く利用するため葉面の向きを変えているのか

質問者:   一般   しだり
登録番号1725   登録日:2008-08-03
農林水産省森林総合研究所の「研究の“森”からNo.79」というサイトに
 「林冠上部の葉はその角度を急にして葉面に当たる強い太陽光を和らげ,下の葉まで光を透過させます。林冠下部の葉は上部で吸収されて弱くなった太陽光をできるだけ多く吸収できるように葉を水平に着けることが分かります。」という記述がありました。
 上記の記述のような葉の動きは多くの植物(:光合成を行う植物)にも当てはまると考えても問題はないでしょうか。
しだり さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問に対する直接のお答えは「そのように考えて問題ないでしょう」です。
関連した質問が登録番号1700、登録番号1703にありますのでお読みなってください。多くの植物の葉は光の方向を感じて向きを変える屈光性という性質を持っています。ただし、その運動の程度は植物種や葉の若さなどによって大きく違いますので、目立つもの、目立たないものはあります。この種の運動は、光を求めるためのものと、光を避けるためのものとがあります。林地の下草のように光量の少ない地帯に生える植物では「光を求めて」葉を光の方向に向ける運動をします。光量の強い地帯や、時期によく成長する植物では強すぎる光を避けるように、光の方向と葉面を平行になるように動きます。身近なものでは河川敷などに繁茂するクズの葉の向きを、よく晴れた日中と朝夕とで観察してみてください。林冠上部の葉の運動は強すぎる光を避ける運動と理解され、それが結果として下部の葉まで光を透過させている、と言えます。光が強すぎる状況とは、光合成による二酸化炭素固定に必要なエネルギー以上の光を受ける状況で、余った光エネルギーは有害な活性酸素発生に使われてしまいます。植物の葉はそのような状態を避ける運動をしています。同じような運動は細胞内にたくさんある葉緑体にも見られ、弱い光の下では葉緑体は光の向きに直角になるように並びますが、強い光の下では、光の向きに平行になるように並ぶことが知られています(登録番号1637をご参照ください)。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-08-11
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