一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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なぜあさがおの種が一緒なのに同じ色が咲かないのか、なぜ白が咲くのか

質問者:   小学生   syunpon
登録番号1727   登録日:2008-08-04
4年前に初めてあさがおの種をまき、赤紫の花を咲かせました。そして、種を
保管し、翌年植え、花は赤紫でした。また、種を保管し、翌年に植えました。
花の色は赤紫、青紫、でした。
翌年、3年目の花の色は赤紫、青紫、白色でした。そして、今年も、赤紫、青紫、白色、青紫の周りだけ白色のものもありました。なぜ同じ種なのに、いろんな色が出てくるのか調べてみました。白は遺伝子の欠落によるものだとか....。そうすれば白の花の種からは永遠に白色なのか、子供の素朴な疑問のようです。朝顔の花の色の秘密について小学3年生レベルでおねがいします。
遺伝子の意味ははなんとなく理解できるようですが。
syunpon 君

4年もアサガオを蒔いて観察したって、すごいですね。そのお蔭で、面白いことに出くわしたようです。アサガオも含めて花の色についてはこれまでにも沢山質問を頂いており、それらについての回答も“みんなのひろば”に載っていますので、それもみて下さい。登録番号0971、登録番号1684、登録番号1705などです。登録番号1705はピンクの花の種子を蒔いたらピンクでない花が咲いたけど、どうしてかと云う質問で、syunpon 君の質問に似ているようなので、登録番号1705 の回答を見ながら考えてみましょう。登録番号1705 への回答では、二つの可能性をあげています。一番目は、一年目にピンクの花を咲かせた植物が、ピンクの花の親と白色の花の親との雑種だったので、二年目にピンクと白が出たという可能性で、二番目は、トランスポゾンによる可能性です。synpon 君の場合、一年目に赤紫で、二年目も赤紫で、三年目になって初めて白色がでています。一年目の赤紫が、赤紫と白の雑種でしたら、二年目に白が出るはずですので、一番目の可能性は低いと思います。となると二番目の可能性に付いて考えなければなりませんが、これは少しややこしいです。まず花びらに色が付いていることから考えましょう。花びらに色が付いているのは、花びらが色の付いた物質(色素と云います)を含んでいるからです。色素を含むためには色素を合成しなければなりません。色素を含んでいる花びらには色素を作っているタンパク質があります。遺伝子という言葉を聞いたことがあると思いますが、遺伝子はタンパク質の作り方の書かれた本のようなもので、遺伝子がないとタンパク質は作れません。色素を含んでいる花びらには、色素を作るためのタンパク質の作り方の書いた遺伝子があります。それで、色素を作るタンパク質が出来て、色素が作られ、色がつくのです。さてトランスポゾンですが、“動く遺伝子”などと呼ばれているように、動き回ることができます。このトランスポゾンが色素を作るためのタンパク質の作り方の書いてある遺伝子の中に飛び込むことがあります。
これが飛び込むと、意味の分かる文章で書かれている本の中に、意味の分からない文章が飛び込んだことになり、タンパク質の作り方が分からなくなります。そうすると色素を作るタンパク質が出来なくなるので、色素もできなくなり、花びらは無色になるのです。トランスポゾンは動き回るので、飛び込んだところから飛び出すこともあります。そうすると、また色素を作るタンパク質を合成することができるようになるので、色がついてきます。白いアサガオの種子を蒔き続けてみて下さい。色が戻って来るのを確かめることが出来るかも知れません。なるべく分かりやすく書こうと頑張ってみましたが、分って貰えたでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-09-20