一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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濃度勾配

質問者:   その他   百瀬 昭志
登録番号0173   登録日:2004-12-01
血液透析患者の皮膚掻痒症について研究しています.

皮膚掻痒症のある患者さんとない患者さんで皮膚のカルシウムイオンを調べたところ,掻痒症がない患者さんは皮膚表面から深部に向かって徐々に濃度が低下するという濃度勾配が出来ていましたが,掻痒症がある患者さんではこの濃度勾配が乱れておりました.
その原因として基底膜におけるこのイオンの篩や皮膚からの水分の蒸発など調べましたが,原因がわかりません.
植物においても葉からの水分蒸発に伴うなんらかの微量元素などの濃度勾配とその乱れなどの現象はありますでしょうか?
また,そのメカニズム等についてもご教示ください.
百瀬 昭志さま

 ご回答が遅れました。植物の葉の表皮は疎水性の蝋質の物質(クチクラ)で覆われており、大半の水の蒸発は表皮細胞の間に分布している気孔(二つの細胞からなる孔)から行われます。この点、ヒトの皮膚からの水の蒸発には特別な細胞は関与しておらず、簡単な比較は難しいと思われます。
 次に、気孔からの蒸散に伴って 微量元素 濃度の勾配が生じる現象が知られているか、というご質問ですが、細胞膜を取り巻く細胞壁中でのそのような微量元素の動態についてのデータはあまり存在しないと思われます。元素組成や存在量が測定できる電子顕微鏡観察から、細胞内のイオン分布を調べた研究はありますが、さらに細胞間、あるいは細胞内で濃度勾配まで確認したものも見たことがありません。
 ご存知の通り、タンパク質などど異なり、イオンのような低分子量の物質の存在状態を測定することはかなり困難で、最近やっと、カルシウムやpHなどに感受性のある蛍光物質の分布から細胞内外のイオン分布の状態が明らかにされるようになってきました。まだ多くの元素について調べるところまでは研究は進んでいませんので、これからの課題ではないかと思います。
 話は直接関係ありませんが、水生植物などでは、葉表面に炭酸カルシウムが蓄積することが知られており、原因は光合成反応に伴う細胞外pHの上昇が原因と考えられています。

 かゆみの原因のひとつにリン酸カルシウムの沈着があるようですが、そのことと、微量元素?の濃度勾配をお考えになる理由がよくわかりませんでした。

 岡崎 芳次(大阪医大)
神戸大
 三村 徹郎
回答日:2009-07-03
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