質問者:
その他
高崎 寛則
登録番号0175
登録日:2004-12-05
マップベースクローニングについて原理と目的を知りたいのですが、本に書かれていることでは理解できなかったので分りやすい説明をお願いしたいと考えております。
みんなのひろば
マップベースクローニング
高崎 寛則さま
どのような本を読まれて、どこが理解できなかったのか、ご質問からだけでは推量りにくいのですが、以下のお答えでご参考になればと思います。
マップベースクローニング(map-based cloning)とは、「(遺伝子)地図に基づいた(遺伝子の)クローニング」ということですので、自分の注目している形質(目が赤い、毛が長いetc.)の原因となる遺伝子を同定し、クローニングすることが目的です。原因遺伝子同定のための手法として遺伝子地図を基にするわけですが、まずはこの遺伝子地図を作るところから始まります。昨今は、人をはじめ様々な生物のゲノムプロジェクトが完了もしくは進行しており、遺伝子地図はすでに存在しているところからスタートできます。また、染色体上の位置を示すマーカーもDNAの塩基配列レベルで多数得ることが可能です。
原理ですが、私が研究材料としている植物(シロイヌナズナ;自家受粉をします)を例に簡単に説明します。まず、自分が注目している表現型を持つ変異体(系統A)と、異なる系統の野生型(系統B)と間で交配を行います。次世代(F1世代)の個体が自家受粉する際、減数分裂時にA-B系統間のキメラ染色体が生じ、F2世代には様々なタイプのキメラ染色体が含まれます。注目している変異が劣性の場合、F2世代の1/4は変異体の表現型を示します。これらのF2世代の変異体はどのようなキメラ染色体を持っていようとも、原因遺伝子の存在する領域は必ず変異体の系統から来ているはずです(つまり系統A)。
多数得られたF2世代の変異体の間で、共通して系統A由来の領域を示す染色体領域に、原因遺伝子があるということになります。そこで、F2世代の変異体の表現型を示す個体について、染色体のどこからどこまでがA系統由来で、どこからどこまでがB系統由来かが判れば良いわけです。それには、これら系統間の塩基配列の多型を検出できる分子マーカーが必要となりますが、ゲノム情報のデータベースが充実しているシロイヌナズナでは、多型の情報もデータベースに豊富に掲載されています。
どうやって遺伝子にまでたどり着くかについては、「秀潤社植物細胞工学シリーズ14 植物のゲノム研究プロトコール p95-103」を参考にしてみてください。
ここに紹介したのはシロイヌナズナの場合で、もちろん生物によっては、自家生殖や多数の交配をすることが困難な種も多々あります。それぞれの実験生物に特有の最も効率のよいマップベースクローニングがあるでしょうから、それぞれのプロトコールを参考にしてください。
古典的な遺伝学についてはいろいろな教科書があると思いますが、「分子生物学講義中継 part1」(井出利憲 著;羊土社)の7日目の章に最近の情報も含めて分かりやすく書かれてありますので、参考にしてみてください。
どのような本を読まれて、どこが理解できなかったのか、ご質問からだけでは推量りにくいのですが、以下のお答えでご参考になればと思います。
マップベースクローニング(map-based cloning)とは、「(遺伝子)地図に基づいた(遺伝子の)クローニング」ということですので、自分の注目している形質(目が赤い、毛が長いetc.)の原因となる遺伝子を同定し、クローニングすることが目的です。原因遺伝子同定のための手法として遺伝子地図を基にするわけですが、まずはこの遺伝子地図を作るところから始まります。昨今は、人をはじめ様々な生物のゲノムプロジェクトが完了もしくは進行しており、遺伝子地図はすでに存在しているところからスタートできます。また、染色体上の位置を示すマーカーもDNAの塩基配列レベルで多数得ることが可能です。
原理ですが、私が研究材料としている植物(シロイヌナズナ;自家受粉をします)を例に簡単に説明します。まず、自分が注目している表現型を持つ変異体(系統A)と、異なる系統の野生型(系統B)と間で交配を行います。次世代(F1世代)の個体が自家受粉する際、減数分裂時にA-B系統間のキメラ染色体が生じ、F2世代には様々なタイプのキメラ染色体が含まれます。注目している変異が劣性の場合、F2世代の1/4は変異体の表現型を示します。これらのF2世代の変異体はどのようなキメラ染色体を持っていようとも、原因遺伝子の存在する領域は必ず変異体の系統から来ているはずです(つまり系統A)。
多数得られたF2世代の変異体の間で、共通して系統A由来の領域を示す染色体領域に、原因遺伝子があるということになります。そこで、F2世代の変異体の表現型を示す個体について、染色体のどこからどこまでがA系統由来で、どこからどこまでがB系統由来かが判れば良いわけです。それには、これら系統間の塩基配列の多型を検出できる分子マーカーが必要となりますが、ゲノム情報のデータベースが充実しているシロイヌナズナでは、多型の情報もデータベースに豊富に掲載されています。
どうやって遺伝子にまでたどり着くかについては、「秀潤社植物細胞工学シリーズ14 植物のゲノム研究プロトコール p95-103」を参考にしてみてください。
ここに紹介したのはシロイヌナズナの場合で、もちろん生物によっては、自家生殖や多数の交配をすることが困難な種も多々あります。それぞれの実験生物に特有の最も効率のよいマップベースクローニングがあるでしょうから、それぞれのプロトコールを参考にしてください。
古典的な遺伝学についてはいろいろな教科書があると思いますが、「分子生物学講義中継 part1」(井出利憲 著;羊土社)の7日目の章に最近の情報も含めて分かりやすく書かれてありますので、参考にしてみてください。
奈良先端科学技術大学院大学
森田(寺尾)美代
回答日:2009-07-03
森田(寺尾)美代
回答日:2009-07-03