一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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塩水で発芽しない種をもう一度発芽させることができますか

質問者:   小学生   みるも
登録番号1752   登録日:2008-08-23
自由研究で、かいわれ大根の発芽と成長を観察しています。
発芽の時には、外からの養分をあたえる必要がない事を勉強して、水、液体肥料(使用法の通りの濃度)、米のとぎ汁(米3合をといだ汁を与え続ける)、塩水(海水と同じ濃度)で、綿の上に各10粒の種を置いて、発芽の観察しました。
結果、初日は水が多く発芽し、2日めは、液体肥料が水より多く発芽しました。
塩水で発芽しなかった種を発芽させることができますか。稲の勉強で塩水でしずんだ種を使うのに、かいわれ大根の種は、水で育てなおしても発芽しませんでした。
米のとぎ汁も、発酵して4本しか育ちません。米のとぎ汁で植物を育てるには、液体肥料のように500倍の水で薄めたほうが良いのでしょうか?
みるも さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
種子の発芽試験は簡単なようでむずかしいですね。予想しないいろいろなことがおきてうまくいかないことは生物の実験ではいつもあることです。
「塩水で発芽しない種をもう一度発芽させることができますか」との疑問が、イネ種子を選ぶのに塩水を使うことからもたれたのはとてもよいことに気がつかれたと思います。イネの種子を選ぶのに食塩ならばおよそ9%の溶液を使います。これは海水の食塩濃度の約2.6倍という高い濃度です。でも、イネの種子をこの塩水にいれて沈んだものを集め、すぐに真水で洗うので種子が食塩と接触する時間が短かく食塩を吸収していません。ところが かいわれダイコンの種子を海水と同じ濃度に2日つけた種子は、食塩をたっぷりと吸収してしまい、食塩の毒性で種子が死んでしまうか発芽できないほど弱ってしまっているのです。そのため洗っても発芽しないのです。海水と同じ濃度の塩水でも生きられる植物は浜辺に生える植物などで多くはありません。
次に米のとぎ汁ですが、みるもさん、とぎ汁には何が含まれていると思いますか。家庭で食べるお米は玄米を互いに強くこすりあわせて、玄米の表面にあるタンパク質や脂肪分をたくさん含んだ細胞を削り取ったもので糖質、タンパク質や脂肪分が主な成分です。削り取ったものを「ぬか」といいますね。お米の表面には「ぬか」の粉がついているのでとぎ汁はこの「ぬか」が水と混ざったものです。植物にとって栄養分となるものはあまり含まれていません。ところが、これらの成分はバクテリア、イースト、カビ類などの好物で、ぬかや空中にいたこれらの微生物が増殖しやすいのです。液体肥料とは性質が違い薄めればよいものではありませんのでよい解決法は思いつきません。ごめんなさい。


みるも さん:

登録番号1752の回答が十分でなかったようです。そのため、みるもさんは次のような疑問をもたれたのですね。とても大事なことですので、この質問を登録番号1752の追加質問として、それに追加回答をします。


追加質問

「質問に答えていただきありがとうございました。米のとぎ汁には、窒素とりんが多量に含まれていると思います。家庭で、よくとぎ汁を植物に与えるのは、液体肥料と同じ成分があるから、植物の成長の肥料になると考えていました。今度は、発芽からではなく、水で発芽させたカイワレをとぎ汁でそだててみたら、全部成長したけれど、液体肥料のように大きく育つ効果がありませんでした。あまり栄養分が含まれていないということは、米のとぎ汁を植物にあたえるとよく育つというのは、思いちがいですか?」


追加回答

この前の回答の中で米のとぎ汁についてお答えが十分でなかったために、このような疑問をもたれたと思います。当然のことです。みるもさんが言われるようにとぎ汁の中には窒素、リン酸が含まれていて、家庭菜園などで「有機肥料」として使います。それはタンパク質やフィチンというリンをたくさん含む物質があるからです。でも、植物はこれらのタンパク質やフィチンをそのままの形では栄養分として利用できないのです。植物が成長するために栄養としてすぐに利用できるのはアンモニア、硝酸、リン酸、カリウム、鉄・・・・などの炭素を含まない簡単な物質や元素(無機物質と言います)です。市販の液体肥料は、このように植物にすぐ吸収される成分からできています。とぎ汁が「肥料」となるのは土の中にいる微生物でタンパク質やフィチンが分解されてアンモニアやリン酸とできてくるからです。みるもさんの思いちがいではありません。かいわれダイコンの種子をとぎ汁の中で発芽させたときは、植物が発芽、成長するよりも早く微生物が増殖してしまうので、植物の成長が妨げられたり栄養を吸収できなかったりするからです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-08-28
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