一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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トマトの色の違いについて

質問者:   中学生   さくら
登録番号1762   登録日:2008-08-30
こんばんは。
質問があります。
最近、トマトを見ているといろいろな色があります。
それをみて、とても疑問に思いました。
それは、どうしたらその色になるのでしょうか?
自分で調べてみたらカロチノイドに関係すると思ったのですが、よくわかりませんでした・・・。
もしも、関係ないのであればカロチノイドのことは考えなくてもらってもよいです。
お願いします。
さくら さま

トマトは現在、日本だけでも120種の栽培品種があり、世界には8,000種以上の品種があります。トマトの祖先(直径1 cm位の果実しかつけない原種)から、果実の大きさ、色、成分が異なった、いろいろの品種が、長い年月の栽培の間に選抜、育種されてきました。これは、トマトに限らず、イネ、ムギ、野菜、その他全ての農業作物についても同じで、野生の原種から、優れた性質をもったものが選抜、育種されてきたものが、現在の栽培品種となっています。

ご質問にありますように、成熟したトマト果実の色は品種によってさまざまです。トマト果実は実が小さい頃は一般にみどり色ですが、これは、葉と同じように、光合成をしている葉緑体をもち、その中に含まれる葉緑素(クロロフィール)の色です。葉緑体には、葉緑素以外にカロテノイドの色素も必ず含まれていますが、葉緑素の含量が高いためカロテノイドの色はみどり色でマスクされ、成熟していないトマト果実でカロテノイドの色は見えません。

トマトの果実が成熟するにつれて、葉緑素が分解しみどり色が消え、残ったカロテノイド、さらに果実の表皮、果肉で盛んに合成されるカロテノイドによって、それぞれの品種に特有のトマトの果実の色をもつようになります。カロテノイドはトマト果実に限らず、全ての植物、動物に含まれ、現在までに750種以上のカロテノイドが分離されています。その化学構造から、カロテノイドは(1)カロテン(炭素と水素のみからできている炭化水素)、 (2)キサントフィル(炭素、水素以外に酸素も含む)に分けられますが、それぞれが特有の色をもち、動物、植物に多彩な色調を与えています。トマトの果実に特有の赤い色はカロテンの一種であるリコペンによるものであり、一方、アルファーカロテン、ベーターカロテンを主に含んでいるトマトは黄色になります。他のカロテノイドや、それぞれのカロテノイドがどの割合で含まれるかによって、多くの品種特有の、多彩な、赤色と黄色の中間色になります。

植物に含まれるカロテノイドは、葉や果実など太陽光が当たる組織に多く含まれています。太陽の強い光によってこれらの組織に活性酸素が生じやすく、ヒトの皮膚が日焼けによって痛められるように、活性酸素は植物の組織を痛めます。トマトの果実を初め植物の組織にカロテノイドが多いのは、カロテノイドが活性酸素を効率よく消すことができ、葉や果実の組織を活性酸素から守るためです。カロテノイドを合成できない植物の変異種は、太陽光の下では生育できません。このように太陽光の下で育つ植物は、ヒトの体の中でも常に生じている活性酸素を消し去るカロテノイドなどを多量に含んでいるため、1日に300 〜400gの野菜、果物を摂取することが健康のために薦められています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-09-08
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