一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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青いバラの変色について

質問者:   中学生   ヘブンリーブルー
登録番号1770   登録日:2008-09-03
青いアサガオの色の変化に興味を持ち、観察したり調べたりしていたところ、青いバラが開発されたと知りました。バラにデルフィニジンを導入したということですが、ヘブンリーブルーの色素であるペオニジンを使ってもバラは青くなるのでしょうか。また、その場合、青いバラは変色するのでしょうか。
教えて下さいます様、宜しくお願い致します。
ヘブンリーブルーさま

このコーナーに質問をありがとうございました。
最近、日本の研究グループがパンジーの遺伝子を導入して“青っぽい”バラをつくることに成功したことが良く知られていますが、まだ問題はあるようです。ご質問には名古屋大学で花の色につて研究されている吉田久美先生がお答え下さいました。ご参考にして下さい。


(吉田久美先生からの回答)
「青いバラをつくる」ことは、未だ成功していないチャレンジングな課題です。
そもそも、世の中にたくさんの青い花がありますが、その花が青くなっている仕組みは、実は、いろいろです。たとえば、空色西洋アサガオヘブンリーブルーは、ご指摘のペオニジンという発色団にたくさんのグルコースとカフェ酸が結合した複雑な構造の色素を持っており、その細胞(正しくは、細胞内にある液胞という大きな袋)の水素イオン濃度(pH)がアルカリ性になっています。つぼみの時には、液胞のpHは弱酸性のため、花の色は赤色です。ご存じでしたでしょうか。花が開くときに液胞pHが上がって青く咲きます。また、ツユクサの青い色は、メタロアントシアニンと呼ばれる、アントシアニンだけでなく、金属イオンや助色素を含む大きな分子によって発色しています。ですから、単純にある青い花の色素を別の花に導入したとしてもその通りの色にはまずなりません。液胞の中で、青色になるような分子同士の相互作用や会合、錯体形成さらに、pHを調節する仕組みがあって、それら全部がうまく働いたときだけ青色になるからです。

たとえば、バラの液胞のpHはとても低く、3から4です。青いアサガオは、逆に高く、7.5以上です。青いアサガオの細胞と全く同じ条件を満たせば、バラを青くすることが可能かもしれませんが、実際には、まだまだ研究はそこまで進んでおらず、色素を作り出す遺伝子の導入にとどまっています。そのために、まだ真に青色のバラが咲いていないのです。

吉田 久美(名古屋大学大学院・情報科学研究科・複雑系科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2008-09-08
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