一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉の蜜?

質問者:   公務員   ちくわぶ
登録番号1771   登録日:2008-09-03
洋ランの葉の先端に水滴らしきものが付いていたので、
登録番号0037の質問の回答にあるように溢泌だと思ったのですが、
この水滴を舐めてみると蜜のように甘く、
さらに湿度が高くなると水滴がベタベタと水アメのようになってます。
「師管液」がしみ出たのなら光合成による糖分だと理解できますが、
溢泌で「導管液」がしみ出たもので
このように蜜のように甘くなったり粘性を持ったり
するものなのでしょうか?
ちくわぶ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
面白いことに気がつかれましたね。溢泌は、夜間や高多湿などで蒸散作用がなく、根の水分環境が十分なときに多くの植物で見られる現象です。葉の先端あるいは周辺にある排水構造にある水孔からしみ出るようにでる液体(溢泌液)は、排水構造に導管末端があるところから導管液が主体ですが、その組成は塩の他に糖、アミノ酸、タンパク質、植物ホルモンなどを含むことが知られています。ライムギではブドウ糖、果糖、がラクトースなどの糖類が、オオムギではブドウ糖がかなり含まれていることが分かっています。温室栽培のハコヤナギは完全な排水構造をもちませんが葉縁からの溢泌液は多量の糖を含み蜜とさえ記載されています。蛍光性タンパク質の遺伝子を導入したタバコでは溢泌液の中にその蛍光性タンパク質が含まれることも証明されています。また、多くのイネ科植物の体内には、病原性のない内生菌類が生息しており、ときにはこれらの内生菌がアルカロイドを作っていることがあります。このような植物の溢泌液にはそのアルカロイドが含まれていることも報告されています。このように、植物の溢泌液の主体は導管液ですが、溢泌にいたるまでの間に周辺の細胞からたくさんの化合物が送り込まれ、その組成は植物の種類や環境条件によってちがってくるものです。ラン特に熱帯ランの多くは花粉を運んでくれる昆虫に報酬としての蜜を出さず、花の色や形で昆虫を惹くきつける戦略をとっているようです。そのため、溢泌液が蜜と思えるほど糖を含んでいるのは面白いことだと思います。病原菌を媒介する昆虫類から守るため蟻などを惹きつけるのかもしれません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-09-08
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