質問者:
教員
つつつん
登録番号1788
登録日:2008-09-21
中学3年生の理科を教えています。みんなのひろば
糸状体を形成する藻類は多細胞生物ですか?
現在授業で単細胞生物・群体・多細胞生物の分類を行っており、群体と多細胞生物の定義が曖昧であることに気がつき、自分なりにある程度調べてみました。
まず、使用しております資料集には、以下のように記載されています。
アオミドロ・・・多細胞生物
ボルボックス・・・細胞群体
ネンジュモ・・・細胞群体
ミクロキスティス・・・単細胞生物
ここで使われている「細胞群体」の表記は、おそらく以下の用語を混同していると思います。
「群体」:多数の藻体が、一つにまとまった形をとるもの。
「細胞群体」:群体を構成する細胞数が一定の群体(定数群体)。
(ウィキペディア引用)
ネンジュモの群体たる由縁は、数珠上の糸状体が多数集まった「イシクラゲ状」の形態をしているため、この資料集で「細胞群体」という表記がしてあると解釈しました。
(正確には「細胞群体」ではなく、「群体」だと思います。)
しかし、球形の細胞が集合して不定形の群体を形成するミクロキスティスは単細胞生物との表記です。
(朝日新聞社『植物の世界』より引用)
ネンジュモが「細胞群体」ではなく「群体」であるならば、構成単位である糸状体は「細胞群体」ではなく「多細胞体」となるのではないかと考えました。
細胞数の増加によって成長する藻類を多細胞生物と定義するならば、ネンジュモも多細胞生物に分類されるのでしょうか?
(糸状体のアオミドロが多細胞生物である由縁より。)
追記で申し訳ありませんが、この資料集には以下の表記が添えられています。
単細胞生物:体が1個の細胞からできている生きもの。
細胞群体:単細胞生物が分裂後にばらばらにならずに集合している生きもの。
多細胞生物:体がたくさんの細胞からできている生きもの。
まとまりのない文章ですが、よろしくお願い致します。
つつつん様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ところで、質問の内容は生理学というよりは分類に関わる事柄ですので、その分野からの専門的回答にはならな いかもしれませんが、分かる範囲でお答えします。
細胞群体という言葉は最初にどこで使われはじめたのか知りませんが、今では生物教育用語としても使われているようですね。以前は群体という言葉で統一されていたとおもいます。いずれにしろ、群体は個体の集合で、新しくできた個体が離れないで相互にくっついている状態(生活型)にあります。その場合、各個体から分泌されたような外衣で覆われていることが多いです。群体という言葉の使われ方をみてみると、ヒドラ虫、ホヤ、コケ虫、管クラゲなどの仲間のように動物の場合はそう呼ばれています。他方細胞群体は単細胞生物の個体が二つ以上集まった連絡的集合の場合に使われるようです。単細胞生物はシアノバクテリア(ラン藻)のような原核生物でも、真核生物でもありえます。細胞群体は確かにウィキペディアの定義によると、一定の細胞数の群体となっていますが、これがどのように専門的に認められた定義かは残念ながらしりません。オオヒゲマワリ(ボルボックス)のような例を挙げればそうなるかもしれません。
生物を単細胞生物、群体(細胞群体)および多細胞生物という観点から分類するとなると、次のように定義できるのではないでしょうか。
単細胞生物:原核・真核を問わず細胞一個が個体であるもの。
多細胞生物:個体が複数の細胞から成り立っているもの。
群体:個体が集まってできた連結体。ただし、これは生活型をしめすもので、上記二つとは本質的に異なる。
多細胞生物の定義に従えば、それを構成している個々の細胞は個体とはなり得ない。したがってアオミドロもネンジュモも多細胞生物とよんでよいことになります。ただし、ネンジュモは原核生物ですが、形態はすべて糸状体を示し、先端と基部とで明瞭な違いがみられます。それに細胞間で原形質連絡が存在します。ネンジュモの仲間は糸状体一本ずつで生活している場合もありますし、多数あつまって、群体となっている場合もあります。この場合は集まった個体間に相互の連絡なないとおもわれます。ネンジュモは考えておられるように、細胞群体ではなく、群体を作って生活することもあるということになるでしょう。
ミクロキスティスはやはりシアノバクテリアでクロオコックスの仲間すが、この仲間は単細胞性の個体のものや群体性のものがあります。ミクロキスティス自体はスイゼンジノリと同じく群体をつくって生活しています。しかし、集まり方も不規則で、外界との境界線もはっきりしません。したがって、ミクロキスティスは単細胞生物ですが、群体を作って生活しているということになります。
以上のことを考えると、細胞群体は群体の一種であり、単細胞生物の個体が集合してできた連絡体ということになるでしょう、その場合、細胞数が一定の数であることが必要か(定数群体)どうかは専門的すぎて分かりません。
なお、「多細胞生物は複数の細胞が集まって一つの個体が構成されている生物であり、群体は複数の個体(単細胞生物であれ、多細胞生物であれ)が集まって一つのまとまりとして生活している、生活型の一つである。」といえます。
ところで、中学で教鞭を執っておられるとのことですが、生物の用語法など詳しく勉強される意欲には敬意を表します。ななたのように熱心な先生がおられると生物教育の分野に心強いものを感じます。しかし、中学生に群体/細胞群体まで詳しいことを教える必要があるかどうかは疑問に思います。英語では群体はcolony で表現されますが、大学の生物学教科書でも、「個体があつまってcolony を形成して生活するものもある。」程度にしか扱われていません。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ところで、質問の内容は生理学というよりは分類に関わる事柄ですので、その分野からの専門的回答にはならな いかもしれませんが、分かる範囲でお答えします。
細胞群体という言葉は最初にどこで使われはじめたのか知りませんが、今では生物教育用語としても使われているようですね。以前は群体という言葉で統一されていたとおもいます。いずれにしろ、群体は個体の集合で、新しくできた個体が離れないで相互にくっついている状態(生活型)にあります。その場合、各個体から分泌されたような外衣で覆われていることが多いです。群体という言葉の使われ方をみてみると、ヒドラ虫、ホヤ、コケ虫、管クラゲなどの仲間のように動物の場合はそう呼ばれています。他方細胞群体は単細胞生物の個体が二つ以上集まった連絡的集合の場合に使われるようです。単細胞生物はシアノバクテリア(ラン藻)のような原核生物でも、真核生物でもありえます。細胞群体は確かにウィキペディアの定義によると、一定の細胞数の群体となっていますが、これがどのように専門的に認められた定義かは残念ながらしりません。オオヒゲマワリ(ボルボックス)のような例を挙げればそうなるかもしれません。
生物を単細胞生物、群体(細胞群体)および多細胞生物という観点から分類するとなると、次のように定義できるのではないでしょうか。
単細胞生物:原核・真核を問わず細胞一個が個体であるもの。
多細胞生物:個体が複数の細胞から成り立っているもの。
群体:個体が集まってできた連結体。ただし、これは生活型をしめすもので、上記二つとは本質的に異なる。
多細胞生物の定義に従えば、それを構成している個々の細胞は個体とはなり得ない。したがってアオミドロもネンジュモも多細胞生物とよんでよいことになります。ただし、ネンジュモは原核生物ですが、形態はすべて糸状体を示し、先端と基部とで明瞭な違いがみられます。それに細胞間で原形質連絡が存在します。ネンジュモの仲間は糸状体一本ずつで生活している場合もありますし、多数あつまって、群体となっている場合もあります。この場合は集まった個体間に相互の連絡なないとおもわれます。ネンジュモは考えておられるように、細胞群体ではなく、群体を作って生活することもあるということになるでしょう。
ミクロキスティスはやはりシアノバクテリアでクロオコックスの仲間すが、この仲間は単細胞性の個体のものや群体性のものがあります。ミクロキスティス自体はスイゼンジノリと同じく群体をつくって生活しています。しかし、集まり方も不規則で、外界との境界線もはっきりしません。したがって、ミクロキスティスは単細胞生物ですが、群体を作って生活しているということになります。
以上のことを考えると、細胞群体は群体の一種であり、単細胞生物の個体が集合してできた連絡体ということになるでしょう、その場合、細胞数が一定の数であることが必要か(定数群体)どうかは専門的すぎて分かりません。
なお、「多細胞生物は複数の細胞が集まって一つの個体が構成されている生物であり、群体は複数の個体(単細胞生物であれ、多細胞生物であれ)が集まって一つのまとまりとして生活している、生活型の一つである。」といえます。
ところで、中学で教鞭を執っておられるとのことですが、生物の用語法など詳しく勉強される意欲には敬意を表します。ななたのように熱心な先生がおられると生物教育の分野に心強いものを感じます。しかし、中学生に群体/細胞群体まで詳しいことを教える必要があるかどうかは疑問に思います。英語では群体はcolony で表現されますが、大学の生物学教科書でも、「個体があつまってcolony を形成して生活するものもある。」程度にしか扱われていません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-09-25
勝見 允行
回答日:2008-09-25