一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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葉の中のイオンの働きについて

質問者:   その他   いかりんぐさーん
登録番号1799   登録日:2008-10-01
芝の葉の中のマグネシウムイオンやカルシウムイオン、硝酸イオンなどはどこでどのような働きをしているのですか?
アスコルビン酸は活性酸素を抑える働きのほか何の働きがありますか、またどの部分にいるのですか?
いかりんぐさーん 様

 シバだけとは限りませんが、植物が生育できるためには水(H2O)、二酸化炭素(CO2)以外に次の14種の元素が必要です。おおよその必要量の高い順に並べると、N, K, Ca, Mg, P, S, Cl, B, Fe, Mn, Zn, Cu, Mo, Niとなります。これらの元素は植物の生育のために、土壌に適当な割合で含まれている必要がありますが、ご質問のようにこれらの元素は大部分イオンの形で根から吸収され、イオンのまま、さらに有機化合物に取り込まれ、それぞれの元素特有の機能を発揮し、一つでも欠けるとそれぞれの元素特有の欠乏症状を示し、成育できなくなります。

 硝酸イオンはアンモニウム・イオンと共に植物に窒素(N)を供給しますが、これは最終的にアミノ酸、次いで蛋白質に取り込まれます。硝酸イオン(NO3-)は根から吸収され、細胞質で硝酸塩レダクターゼによって亜硝酸イオン(NO2-)に還元され、葉の細胞では葉緑体に移動し、ここで亜硝酸塩レダクターゼによってアンモニウム・イオンに還元され、蛋白質をはじめ、植物に多種類含まれている窒素を含む化合物の源になります。
 
 マグネシウム・イオン(Mg2+)はこの状態で生化学反応のうちとくにATPが関与する酵素反応に必要なため、細胞の全てのところに分布しています。一方、葉緑体のクロロフィール(葉緑素)にはMgが結合し、光合成のために欠かすことのできない元素です。

 カルシウム・イオン(Ca2+)は細胞中でほとんどイオンの状態で存在し、酵素反応の調節、さらに細胞のいろんな反応の調節のため、カルモジュリンと共同して信号分子として機能しています。カルシウムは植物体内を移動しにくいため、カルシウムの欠乏症状は他の元素に比べ新しい芽や葉に生じやすい特長をもっています。

 アスコルビン酸は葉の細胞ではとくに葉緑体に高い濃度(20〜30 mM)で分布しています。アスコルビン酸はアスコルビン酸ペルオキシダーゼによって、活性酸素の一つである過酸化水素(H2O2)を水に還元して消去する役割をもっています。葉の細胞では光合成をする葉緑体が最も活性酸素を発生しやすいためアスコルビン酸は葉緑体に最も多量に存在しています。葉緑体の他に、活性酸素を生成するミトコンドリア、ペルオキシゾームにもアスコルビン酸ペルオキシダーゼが存在しています。アスコルビン酸は過酸化水素の消去の他に、活性酸素によって脂質が酸化されて生ずる脂質ラジカルやこのときに生ずるトコフェロール(ビタミンE, 葉にも多く含まれている)のラジカルを消去する機能ももっています。これによってアスコルビン酸は脂質の活性酸素による酸化も抑制しています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二 
回答日:2008-10-27
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