一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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腺の種類と役割について

質問者:   一般   京の山花
登録番号1809   登録日:2008-10-09
 初歩的な質問で申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
野山を歩き季節の植物を楽しんでいる者です。
植物を同定するのにインターネットや色んな図鑑を利用していますが、
腺点(油点)のあるなし、場所、色などが一つの指標とされています。
しかし腺点の詳しい説明がなく、よく分からず困っています。
 油点で色素のあるものが黒点、ないものが明点とありますが、赤褐色の腺点もあり、腺点と油点を全く同じものとしてに使われたり、別のもののように書かれたりしていますが、腺点のなかに油点と他に何かあるのですか?
 油点のように精油成分を分泌して香りを出したり、花外蜜腺のように蟻をよびよせたりして、食害に対する防御作用があることは理解できますが、他にどのような役割がありますか?
あまり匂わない葉にも腺点があるようですが、腺点に精油成分以外の成分を出すものがありますか? 
京の山花 さん

回答を差しあげるのが大幅に遅れてしまって申しわけありません。

植物の葉を太陽にかざして見ると、光を透しやすい“明点”と透しにくし“黒点”が見えるものがあります。これらの部分は、拡がって線状になっていたり斑状になっていたりする場合もあります。“明点”や“黒点”は種に特徴的である場合が多いので、その形や分布のパターンなどが同定の指標として使われることもあります。
これらの“点”は、場合によっては、表皮細胞の突起(例えば、腺状突起―分泌毛、腺毛)や巨大化した細胞含有物に由来する場合もありますが、多くの場合には何らかの意味で分泌に関係しております。このような場合には“腺点(腺体とも呼ばれる)”と呼ばれることがあります。形態学的には、分泌細胞に取り囲まれた細胞の間隙(または細胞が壊れたもの)に分泌物や排泄物が大量に蓄積されている状態の場合が多く、組織学的には表皮細胞層の内側に作られる基本組織に属しております。分泌物や排泄物を含む組織ですので、“分泌組織”と呼ばれることもあります。分泌物の種類によって“油室または油腺、精油腺(精油の場合)”、樹脂嚢(樹脂の場合)、粘液嚢(ペクトースなどの粘液の場合)などと区別して呼ばれることもあります。
分泌物には暗赤色のヒペリシンその他の化合物が含まれている場合があり(例えば、オトギリソウの場合)、その含量や成分の違いによって色が黒く見えたり、赤褐色に見えたりするのだと思います。
分泌組織(細胞)に含まれるこれらの物質の生理学的な機能については、現在解明が進んでいるところです。ご指摘のように、植物と動物の間や、植物同士の間のコミュニケーションに役立っていたり、動物による食害からの防御の機能に関係したり(タンニンやアルカロイド、シュウ酸カルシウムなど)、代謝の結果不要になった物質の貯蔵や排泄の役割を担ったりしている場合が考えられていますが、まだ良くわかっておりません。

以上、簡単な答えになってしまいましたが、更に詳しくお知りになりたい場合には、改めて質問をお寄せ下さい。今度は早く対応できると思っております。

遅くなったことを重ねてお詫びします。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2008-11-05
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