一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ビタミンEについて

質問者:   一般   身土不二
登録番号1822   登録日:2008-10-23
 豆類や米などの種子類にはビタミンEが豊富に含まれていますが、このビタミンEは豆類や種子類にどんな効果を与えているのでしょうか。
 また、ハクサイやホウレンソウなどの野菜にはビタミンEが含まれていないのはなぜなのでしょうか?
身土 不二 様

ビタミンはヒトが自分自身で合成できないため、食物を通して摂取しなければならない低分子化合物の総称ですが、現在までに、12種類が見つけられています。ビタミンEは化学的にはトコフェロールであり、植物にとってはビタミンではないため、植物の教科書では、トコフェロールとよんでいます。トコフェロールには4種ありますが、基本骨格は同じです。トコフェロールは水には溶けませんが、脂質にはよく溶けます。ヒトでも植物でも細胞内で脂質の多い細胞膜、ミトコンドリアにあり、植物では葉緑体チラコイド膜、また、脂質を貯蔵する細胞では細胞内のオイルボデイにも分布しています。トコフェロールは脂質が活性酸素によって酸化されるのを防ぐ役割をもち、先ず活性酸素(とくに一重項酸素)を消す作用、さらに活性酸素によって脂質が酸化されて生ずる脂質ラジカルを消去し、脂質の酸化がそれ以上に進行しないようにする機能をもっています。

ご質問にあるいくつかの植物のトコフェロールの含量については少し誤解されているところがあります。食品分析のデータによれば(食品分析表、東京書籍、2006), イネ種子、ダイズ種子, ハクサイ、ホウレンソウのトコフェロール含量はそれぞれ、1.2(玄米)、1.8, 0.2, 2.1 (mg/100 g)となっています。一般に緑色の濃い野菜は葉緑体をたくさんもっているため、トコフェロール含量が高く、ハクサイの含量が低いのは内側の葉緑体の少ない白い葉の割合が高いためと思われます。イネでは玄米での含量は上の通りですが、米粒の外側にあるぬか層(アリューロン層)や胚芽を精米で削り取った精白米のトコフェロール含量は低くなります(0.1 mg/100 g)。一方、米ぬかから抽出した米ぬか油のトコフェロール含量は25.5 mg/100 gであり、玄米でトコフェロールは大部分アリューロン層の細胞にあるオイルボデイに局在していることになります。ちなみに、大豆油のトコフェロール含量は10.4 mg/100 gであり、ダイズの場合も種子の中でトコフェロールは大部分オイルボデイに局在していると考えられます。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2008-10-28
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