一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木と太陽光

質問者:   一般   ケイ
登録番号1824   登録日:2008-10-27
はじめて質問させていただきます。
中学生の息子がいるのですが、その息子が私に相談をしてきました。
「樹木は太陽の光の何を吸収するの?」
この質問に対して私は、「太陽光の中の可視光だよ。」と答えたのですが、それは葉の光合成で使われる光で、葉以外の部分は可視光だけ吸収するのではないのでは…?と疑問に思いました。
普段、こういう質問は頭に残らないのですが、気になって頭から離れず気持ち悪いです。息子にはお互いに調べようと言ったですが、本やWEBで検索してもよくわかりません。
今のところ、太陽光は、ガンマ線・エックス線(微量)、紫外線(7%)、可視光線(約47%)、赤外線(約46%)、電波(微量)を含んでいて、葉は可視光を吸収して光合成するというところまで調べています(これが答えかわかりませんが…。)
葉以外は何を吸収しているかはまだわかりません。
私が思うに、可視光や赤外線を主に吸収していると思うのですが、どうでしょうか。すみませんが、よろしくお願いします。
ケイ さん

このコーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。

先ず、光のことについての理解を整理させていただきます。
ご存知のように、光(一般的には、電磁波)は波としての性質をもっており、ガンマ線・エックス線・紫外線・可視光線・赤外線・・・は、一連の電磁波の波長(エネルギーの大きさ)による便宜的な区分です。因みに、可視光線とは、ヒトの目に光と感じる波長範囲の電磁波のことで、大まかには380ナノメーター(波長の単位)から800ナノメーターの波長範囲の光のことを指しています(可視光線の範囲は人によって異なります)。
ところで、可視光線が吸収されているかどうかは、そのものに色が付いているかどうかで簡単に分かります。色が付いていれば、そこには特定の波長領域の光を吸収する色素が含まれていることを示しております。一方、赤外線は一般に熱線と呼ばれ、水蒸気や二酸化炭素を含めて殆んどすべての物質によって吸収されますが、吸収を色として肉眼で見ることは出来ません。ただし、この場合にも吸収の程度は波長により、物質により大きく異なります(赤外線を一まとめにして論ずることは出来ません。この点は紫外線についても同様です)。

さて、植物の葉にはクロロフィル(葉緑素)と呼ばれる色素が含まれており、この色素によって吸収された光が光合成に利用されます。ただし、クロロフィルの吸収する波長範囲が可視光線の範囲に一致しているわけではありません。クロロフィルは紫外線の一部をも吸収します。関連して付け加えれば、光合成を行なうバクテリアのあるものは赤外線の一部をも吸収して利用しています。
葉にはクロロフィル以外にも多種類の色素が含まれております。それらのうちのあるものは紫外線や赤外線をも吸収し、場合によっては、これらの光が生命活動の維持に大変重要な役割を担っております。この点について更に詳しくお知りになりたければ、改めて質問をお寄せ下さい。

最後に、ご質問に対する回答をまとめさせていただくと、「植物の葉以外の部分は、可視光線、赤外線、紫外線を吸収しています。但し、その吸収の程度は場合によって大きく異なります」。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2008-11-05
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