一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉の表面への組織内水分の滲出状況の撮影

質問者:   一般   渡邉 博文
登録番号1828   登録日:2008-10-29
野菜の表面に着生している細菌をそのまま撮ってやろうと毎日顕微鏡を覗いています。
染色法とレプリカ法とを組み合わせて検体を作っています。
現在は、細菌にはとどかず、圧倒的に存在感がある菌類との格闘に時間を費やしています。
その過程で葉の表面に組織内から水分が滲出する様子を撮影することができました。
(ニンヒドリンで対象部分にアミノ酸が含まれていることを確認しています)
こうした写真をインターネットで探しましたが見つかりませんでした。
また、滲出箇所に関する文献の記載も葉脈、細胞境界、等々と包括的です。
観察結果から、もう少し具体的な表現が可能と考えています。
結果に何らかの価値が有りますか。
それとも常識のレベルでしょうか。
宜しくご教授下さい。
渡邉 博文 様

ご質問の主旨は「なにか特別の構造があるか」ということなのか、それとも、「表皮からの水分の滲出は新知見と考えてよいか」ということなのでしょうか。

観察された野菜の種類や方法、写真などが分からないと的確な答えができないかもしれません。もっとも、分かってもこたえられないかもしれませんが。野菜の葉(多分は野菜だと想像します)といってもどの野菜か様々なので、もしかすると特別な例外的構造がある品種なのかもしれないという可能性はゼロではありません。でも排水機構についてなにか未知の構造があるとはちょっと考えられません。役に立つかどうかわかりませんが、ここでは葉からの排水について一般的なことについて説明しておきます。

葉の表皮の外側は普通クチクラ層で隙間なく覆われ、また、さらにワックスで固められている場合もあります。野菜は柔らかですから硬質の葉に比べれば、これらの外壁は薄いと思います。表皮組織は気孔(葉の裏面に特に多い)と排水組織を除いて細胞間隙はなく、表皮細胞がつながった組織です。だから表皮から水分が滲み出ることはまずないでしょう。もっとも、クチクラ層がきわめて薄いということであれば、細胞壁から直接水分が滲み出ることはあるかもしれません。細胞壁マトリックスは水で満たされており、いわば水の通路ですから。ふつう水分は、気孔からも出ますが、積極的には排水組織(hydathodes)の孔から排水されます。排水組織には表皮細胞に由来する排水毛と排水細胞が知られています。前者は数個の細胞からなる毛状の構造体で先端や中間の細胞から水分を分泌します。後者はあまり一般的ではありませんが、平面的で表皮に埋没した形の一個の細胞で表面の突起から排水します。また、排水組織には水孔という構造もあります、これはふつう葉の先端や縁の葉脈の末端近くに存在します。サトイモ、アジサイなど朝に露のように葉についているのを見られたことがると思います。

ところで、表層微生物を観察されているようですが、葉面には無数の微生物が生息していますから、有機物が検出されてもそれが微生物由来のものでないということを証明するには、注意深く無菌的に培養した植物体を用いるか、植物体に与えた標識した物質が浸出液中に検出されるかなどしないとなんともいえません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-11-05
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