一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タケノコの稈鞘に気孔があるのか

質問者:   大学生   ligeia
登録番号1831   登録日:2008-11-04
タケノコが地上に出てから、立派なタケに成長するまで、数日しかかかりません。タケノコの呼吸はほかの植物や成熟タケより高いことがインターネットから知りました。しかしタケノコは茶色く丈夫な鞘で覆われていて、しかも何層にもなっています。

このような厳重装備で、酸素はどこから供給されるのでしょうか?
私は鞘の表面に気孔があると、とても思えませんが。
だとすると鞘の間に空気が入り込むとしか可能性がありません。
これでも納得いかないので、ここで質問させて頂きます。

よろしくお願い致します。
ligeiaさま

“みんなのひろば”へのご質問有難うございました。頂いたご質問の回答を東京大学の寺島一郎先生にお願いいたしましたところ、以下にありますように、実際に観察を為さった結果を踏まえての回答をお寄せ下さいました。ご参考になると思います。


寺島先生の回答

 タケノコの皮(稈鞘)には気孔があるのか。実際に見てみるのが一番いいですが、あいにく、季節ではありません。どうしようかと思っているうちに、小学生の娘が版画の宿題をやっているとき「バレン」でこすっていたのを思い出しました。高倍率の実体顕微鏡で見てみたら、ありました。

 バレンの表面は、タケノコの表側です。稈鞘は葉的器官ですので、タケノコの表側は葉の裏側にあたります。この裏側の、とくに脈と脈の間の凹部に気孔がきれいに並んでいました。タケを直接保護する表側には、気孔が見当たりません。昔は、肉などを竹の皮で包んでいましたけど、タケノコ側=葉の表側に肉を置いていたと記憶しています。気孔が有る側に肉を置くと、毛管現象で血がしみ込んだりするかもしれません。

 上田弘一郎 「竹と日本人」 NHKブックス (1979)によると、このような用途に用いる竹の皮(稈鞘)はマダケのもののようです。タケノコの時期にこの稈鞘をはがしとってしまうと、タケはすくすく伸びず、ぐずぐずになってしまうとのことです。おそらく、タケノコを物理的衝撃や乾燥から守っているのだろうと思いますが、後者については、気孔のない表側をタケに接触させるのが有効であろうと思います。
 
 表面に気孔があるのですから、稈鞘の内部の細胞間隙を酸素が拡散し、タケノコにも酸素を供給することは可能だと考えられます。太い木の幹にも生きた細胞が沢山あるし、水につかりやすい渓畔林のハンノキなどは根にも、幹の樹皮の表面にある皮目から酸素が供給されます。もしかすると、タケの場合にも単なる拡散だけではなく、ハンノキ、スイレン、ヨシ、ハスなどで知られているクヌートセン現象がおこり、より効率的なマスフローによる酸素の供給と二酸化炭素の排気がなされているかもしれません。もっとも、酸素は高濃度で存在するガスですから、ちょっと隙間があれば、拡散には問題ないと思われますが。Knudsen現象については、長くなるので、ここでは説明いたしません。物理学の本を参照してください。

寺島 一郎(東京大学)
JSPPサイエンス・アドバイザ-
柴岡弘郎
回答日:2008-12-15
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