一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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タマネギの表皮の役割と、その有無による劣化度合いについて

質問者:   会社員   音羽 裕之
登録番号1836   登録日:2008-11-06
タマネギの皮を剥いた状態で納入したものを加工しています。皮を剥かない状態で納入したタマネギよりも、製品にしたときの菌数増加が激しいです。
表皮の役割について教えてください。タマネギに限らず、どんな野菜も同じでしょうか?
また、表皮の有無によってタマネギの劣化の進み具合はどれほど違うのでしょうか?
鮮度を保つためには、皮がついた状態にしておくほうがいいのでしょうか?
音羽 裕之様

質問コーナーへようこそ。ご来場歓迎します。質問にお答えします。

[回答]
まずタマネギの外部形態について基礎的なことを説明します。タマネギの食用にする球形の部分は鱗茎とよばれ、中心に短くなった円錐状の茎と周りに多肉性の葉がついたものです。ユリ根と同じです。言ってみれば広い葉が着いた茎がそのままぐっと押し縮まり、葉は押し重なって球のようになったと考えて下さい。従って、一番外側の鱗葉は一番下の葉ということになります。収穫後外側の鱗葉は乾燥して薄い褐色の紙のようになり、これは一般には鬼皮と呼ばれています。栗やソバなどの堅い外側の皮も鬼皮と呼んでいます。ご質問の「皮」というのはこの鬼皮のことだと思いますが、これを「表皮」とはいいません。乾燥した鱗葉です。タマネギの鬼皮はどんな役割をしているのかというと、おそらく内側の鱗葉の湿度が保たれ、外部からの様々な傷害を防いでいると考えられます。タマネギにはケルセチンというフラボノイド系の物質が含まれていますが、この物質は抗菌・抗酸化作用があるという報告もあり、鬼皮には多いともいわれていますので、内部の鱗葉の保護に対してそのような役割を持っているのかもしれません。
ところで、「表皮」についても説明をしておきます。植物の体、根、茎、葉、花、果実など全ての器官はの一番外側は表皮という組織で覆われています。表皮は一層ないし数層の細胞層からできていて、植物が外部と直接に接する部分です。表皮は植物体を保護し、水分が失われるのを防ぐ働きをしています。多くの場合表皮の外側はクチクラやワックスでコーティングされており、隙間はありません。葉などではところどころに気孔という孔があり、そこを通して光合成のための二酸化炭素の取り入れや、酸素の排出をおこなったり、水分の蒸発(蒸散という)をおこないます。また、器官により、植物の種類により、毛などが分化していることも多いです。タマネギの鱗葉について言えば、鱗葉の内側(葉の表側に相当します)の表面が薄く剥がれてくることがありますが、それは表皮です。もちろん外側(葉の裏側に相当)にもあります。
タマネギをいい状態で保存するには鬼皮が着いていた方が内部が痛まないと思いますが、タマネギ自体の劣化については業者の方が技術的な面でよく知っておられることと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2008-11-17
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