植物Q&A

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柿の隔年について

質問者:   会社員   砂川 学
登録番号1844   登録日:2008-11-13
柿は、実が沢山なる年とならない年が交互にくることは良く知られています。
専門の農家では、毎年剪定をして新しい枝を伸ばし、また、実の数を調整し
て、実の数を安定させています。実が沢山なる年とならない年は、相当に距
離が離れた地域でも同期しているように思われます。
さて質問したいのは、以下の点です。

 ・隔年はどうしておきるのでしょうか。(特に柿)
 ・隔年は、距離が離れた地域でも同期しているのでしょうか。同期しているならば、なぜでしょうか。

よろしくお願いします。
砂川 学さま

大変お待たせしてしまいました。頂いたご質問に関係ありそうな記事が日本植物生理学会監修の「花はなぜ咲くの?」という本にあるのを見つけたのですが、その記事の資料を提供なさった酒井章子さん(京都大学・総合地球環境学研究所)を私は存じ上げていなかったので、その本の纏めをなさった京都大学の荒木 崇先生を通して酒井さんに回答をお願いいたしました。そんなことで、回答が遅くなってしまいましたが、酒井さんから回答が頂けたので、お届けします。「花はなぜ咲くの?」(化学同人)の中の酒井さんが資料提供為さった章も参考にして下さい。


酒井 章子先生のご回答

質問)
・隔年はどうしておきるのでしょうか。(特に柿)

植物は、自然状態では、毎年開花・結実する植物でもその量は大きく変化することがよくあります。なぜでしょうか?1つめの理由は、光合成での稼ぎと、最適な開花・結実の規模の関係の不一致があります。日本のようなところでは、ほとんどの植物は1年に1回花を咲かせ実をつけます。しかし、1年という時間が、植物の繁殖のリズムに最適なのかどうか、というのは別の話です。植物が花をさかせ実をつけるのには、いろいろな理由から、ちょうどいい規模、というのがあるような気がします。ちょっとしか花を咲かせなければ、花粉を運ぶ虫に見向きもされず花粉媒介がうまくいかないかもしれませんが、たくさんつけすぎると、こんどは虫が足りなくなって無駄が多くなるかも知れません。

1年の光合成の稼ぎと、1回の開花・結実に最適な光合成量に差があると、稼ぎを1年以上ためておいて、実をつけるは2年に1回でいいや、とか3年に2回くらいでいいかな、となったりします。しかし、なり年でない年も花が全く咲かないことはあまりありません。それは、植物がそんなにうまく開花をコントロールできないこともあるかもしれませんし、来年の開花まで生きていられるとは限らない、とか、稼ぎがあまるんだったらつかっちゃおうとか、いろいろな理由が考えられます。また、種子を食べる害虫との関係でも、コンスタントに種子を生産するのは、得策ではないと考えられています。不作と豊作が交互にあれば、不作の年に害虫の数が減るので豊作の年の種子を食べきれずに残してしまうかもしれませんが、コンスタントに毎年種子を生産していれば、毎年全滅させてしまうかもしれません。

2つめの理由は、不確定な要素がいろいろあることです。花芽が寒さでだめになってしまったり、花が咲いても咲いた時期に天候不順で受粉がうまくいかなければ、結実量が減ります。実が付かなければ、その分稼ぎを使う量が減りますから、来年の花や実の量はぐっと増えることになるかもしれません。結実量が増えた次の年は、木も疲れて、またぐっと減ってしまうでしょう。農家の方々は、毎年コンスタントに実がなるように手入れをされるのだと思うのですが、それでも変化してしまうのですね。あまり手をいれていない木では、その差はさらに大きくなると思います。


質問)
・隔年は、距離が離れた地域でも同期しているのでしょうか。同期しているならば、なぜでしょうか。

植物の種類や距離にもよりますが、広い地域でなり年が同調する現象はよくみられます。同期には、植物が積極的に同調させている場合と、天候など(上で述べた寒さや天候不順など)が広域で同調するために植物の豊作・凶作も同調する場合があります。後者については、あまり説明は必要ないと思います。前者については、次のように説明することができます。植物が花を咲かせるのは、花粉を交換するという目的があるのですが、たくさんの木がたくさんの花を咲かせていたほうが花粉の交換がうまくいく確率が高くなります。したがって、花が多い年と少ない年があるのなら、自分もそれにあわせた方が得なのです。また、上にのべた種子を食べる害虫との関係を考えても、豊作の年に自分もたくさん実をつけたほうがよさそうです。そのため、たくさんの植物で開花を同調させる仕組みを持っている植物がいます。たとえば、5月がとても寒い年には花を咲かせよう、とか、夏が暑ければ次の春に花を咲かせよう、というわけです。でも、同調のメカニズムはあまりよくわかっていません。

酒井 章子(京都大学・総合地球環境学研究所)
JSPPサイエンス・アドバイザー
柴岡弘郎
回答日:2008-12-15